2019 Fiscal Year Research-status Report
Optimum Design Considering Risk Scenario Based on Resilience Engineering for Smart Structural Systems
Project/Area Number |
18K18812
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小木曽 望 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70295715)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | レジリエンス工学 / 多目的最適設計 / スマート構造システム / 不確定性 / アベイラビリティ / ロバスト性 / リスクシナリオ / 回復性 |
Outline of Annual Research Achievements |
レジリエンス工学は,事故や災害への対策には「想定外に対処する」ことが必要という立場から,防災の分野で普及してきた概念である.安全余裕だけでなく,リスクに対してシステムが柔軟に対応すること,想定外の大きな環境変化に対して機能劣化が緩やかであること,故障から回復できることを重視している.平たく言えば,信頼性,ロバスト性,冗長性に,適応的な機能分担を統合した考え方である.そこで,本研究では,航空宇宙で用いるスマート構造として,申請者がこれまでに取り組んでいるモーフィング翼と宇宙スマートリフレクターを対象として下記の研究を行った. モーフィング翼に関しては,モーフィングフラップの一部が故障しても残りの機能により特性を回復できるための方策を提案した.ここでは,複数のフラップを有する翼形態に対し,一部のフラップが故障して舵角が0に戻った場合,生き残っているフラップの舵角を変化させて故障前と同じ揚力を確保することを考える.この際,故障前後での揚力差を最小化するだけでなく,フラップ舵角の変化量を最小化も考え,多目的最適設計問題として定式化した.数値計算例を通して,冗長性と適応的な機能分担とを組み合わせることの有用性を示した. 宇宙スマートリフレクターにおいては,アクチュエータの一部が故障した際に,生き残っているアクチュエータで機能を回復させることを目的とした設計問題を,多目的最適設計問題として定式化した.数値計算例を通してその効果を明確にした.さらには,アベイラビリティの考え方を導入した.アクチュエータが故障した場合にすべての条件で観測できなくなる場合でも,観測時間を最大にする手法を提案している. また,変位拡大機構に対しては,昨年度に残っていた問題を解決し,多目的最適設計問題によって得られた形状を製作し,実験により機能検証を行うことができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,航空宇宙に関する3つの設計例を対象として研究を進めてきた. まず,複数のモーフィングフラップを有する翼において,一部のフラップが故障して舵角が0に戻ってしまう場合に,残りのフラップを使って揚力を回復させること,そして,その際に最小の舵角操作量で達成するシナリオを考え,多目的最適設計問題として定式化を行い,数値計算例によりその有効性を確認することができた. 宇宙スマートリフレクターに関しては,一部のアクチュエータが故障した場合に,残りのアクチュエータによって鏡面誤差を最小化することで観測条件を満足させることを考え,多目的最適設計問題として定式化を行い,数値健さん例により有効性を確認することができた.その一方で,すべての観測条件が満足できない場合がある.その場合には有効な観測時間を最大化することを考える.その際,有効な観測時間をアベイラビリティの考え方を適用することで,必要なアベイラビリティを達成するためのアクチュエータに要求される故障率を求めるような新しいリスクシナリオを提案することができた. 変位拡大機構に対しては,昨年度に残っていた問題を解決し,多目的最適設計問題によって得られた新たな形状を製作し,実験により機能検証を行った.これにより,ある種の性能限界も明確になり,レジリエントな運用方法を構築することの必要性を明らかにした. さらに,不確定性を考慮する宇宙構造物として,宇宙伸展マストに着目することにした.これは伸展するためには節点部にガタが必要であり,また伸展に伴って部品が接触することによって生じる摩擦を考慮する必要がある.これらの不確定性が指向性におよぼす影響の定式化を行うとともに,レジリエンス工学を考慮した設計問題を適用するための準備を進めた.
|
Strategy for Future Research Activity |
最終目標は,スマート構造システムに対して「暴走したらどうするか?」という懸念に対して,「○○と△△を考慮すれば,リスクと合理的にうまくつきあうことができるようになる」という回答を示すために,レジリエンス工学に基づくスマート構造の最適設計法を構築することである. モーフィング翼に対しては,2019年度に構築したアクチュエータの一部が故障した場合の機能回復シナリオの高度化を進める.2019年度には空力荷重の影響を考慮するとともに,冗長性と適応的な機能分担との組み合わせ効果を明確にすることができた.ただし,空力荷重の変動の影響については十分に考慮できていなかったので,その点を多目的最適設計問題に取り入れる.さらに,計算効率と計算精度を考え,変動をモデル化する確率モデルに確率過程を採用することを考える.これには,別の研究で実装化しているので,それを取り入れることで,効率的に進める予定である. また,宇宙スマートリフレクターに関しては,アクチュエータが故障した場合に,他のアクチュエータを使って形状誤差が最小となるように調整するだけでなく,観測可能となる観測時間を伸ばすために,アベイラビリティの考え方を導入する手法を提案した.この提案手法をさらに発展させ,スマートリフレクターの運用シナリオを確立する予定である. これらを統括して,レジリエンス工学に基づく設計法の有効性をまとめ,スマート構造システム以外の設計問題へ展開する可能性を探る.
|
Causes of Carryover |
残額は72,900円であり,今年度の予算額2,041,314円に対しては5%以下である.新型コロナウィルスの影響で,3月に計画していた国内出張が無くなったこともその一因でもある. この残額は,最終年度に計画している「スマート構造要素の設計・試作および検証実験」で利用する.さらに,新型コロナウィルスの影響で,国内外を問わず,学会発表が予定より少なくなるものと考えられる.その分を「最適設計モデルの更新」で必要となるワークステーション購入など,研究成果の向上のために利用することを考える.
|