2019 Fiscal Year Research-status Report
トレーサ粒子を用いない革新的非接触流速計測手法確立と多様な流動場に対する適用
Project/Area Number |
18K18820
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
早川 晃弘 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (90709156)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | LITGS / 流速計測 / 温度計測 / 定量計測 / 非接触 |
Outline of Annual Research Achievements |
流速は流動現象を把握するために最も重要な物理量の一つである.従来流速は,熱線流速計のように流れ場にプローブ等を挿入することによって計測する方法や,PIV(Particle Image Velocimetry)やLDV(Laser Doppler Velocimetry)のように,粒子が流れ場に追従するとみなして,その粒子の動きを計測する方法が広く利用されている.しかしながらこれら手法には課題がある.プローブ等を挿入する方法ではプローブ挿入が流動場に影響を及ぼすことが考えられる.また粒子を追従する方法では,粒子の追従性,機器への粒子混入や観測窓の汚れ等によって計測が困難となる.そこで本研究ではLITGS(Laser Induced Thermal Grating Spectroscopy)を応用し,流れ場にトレーサとなる化学種を添加することで,非接触での流速計測手法の確立し,多様な流れ場に適用することを目指す.計測点に異なる方向から2本のプローブレーザーを入射し,それぞれから得られる信号を計測する.もし計測点に流れがある場合,これらから取得される信号はドップラーシフトによって信号の振動周波数が変化するものと考えられ,これから計測点における流速が計測できる. 令和元年度はNd:YAGレーザーの第四高調波(266 nm)を励起波長とする光学系を構築し,2本のプローブレーザー光から別々に信号を取得することに成功した.さらに,アセトン蒸気/空気混合気をノズルから噴射させた噴流に対して流速計測を実施した.得られた信号を解析したところ,噴流流速の増大に対して,流速が算出できるような明確な周波数差を得ることが出来なかった.これは噴流速度を上げるために空気流量を上げた結果,実験条件によってアセトン濃度が大きく変化したため,このトレーサガス濃度の影響が大きくあらわれた可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は液体に対する流速計測を実施するために光学系構築を行い,その結果信号を得ることが出来なかった.そこで令和元年度は,これまで研究代表者らが計測実績のある気体に対する計測が実施できるように,用いる励起波長を変更して光学系を構築した.その結果,上述のように,2本のプローブレーザーのいずれからも信号を取得することが出来る光学系の構築に成功したため,この点は進捗があったとして評価できる.しかしながら流速計測に際し,流速の変化に対してこちらが想定したような信号周波数の変化は見られなかったため,流速計測には至っていない.これを解決するためには,噴流装置実験系の見直しを要するものと考えられる.このようなことから,総合的に「やや遅れている」と評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように,流量の増大に対して信号周波数の明確な変化が見られなかった理由として以下の2つの理由が考えられる:(1)計測対象となるアセトン噴流においてアセトン濃度の変化が信号周波数に大きく影響を及ぼした可能性,および(2)計測領域に対して噴流が小さすぎた可能性である.令和2年度は,光学系の見直しを行うとともに,アセトン濃度の制御が比較的容易な低流速条件から実験を実施して,流速の変化に対する信号周波数の変化を調べる.この結果に基づいて,徐々に流速を上げていき,高流速条件における流速取得を目指す.その後,多様な流動場に対する適用について検討を行う.
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Causes of Carryover |
実験進捗に遅れが生じたため,研究課題の延長を申請し,認められている.次年度使用額については令和元年度の研究進捗の遅れによって生じたものである.この予算については令和2年度の研究実施に必要であり,計画的に執行する予定である.
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