2019 Fiscal Year Annual Research Report
Asymptotic theory based on molecular dynamics of vapor-liquid system
Project/Area Number |
18K18824
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
矢野 猛 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60200557)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 分子動力学 / ボルツマン方程式 / 気液界面 / Knudsen層 / 漸近理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子数3万、12万、50万、200万の4種類のLJ分子の気液2相平衡系に対する分子動力学計算を実行し、分子運動にともなうゆらぎについて理解を得ることを目的とした解析を行った。温度を三重点温度近傍に設定することにより、気体分子の平均自由行程は分子サイズの数十倍となるが、計算対象の気体領域の大きさは、それよりも十分に大きい。分子数→∞の極限で無視できるゆらぎであっても、数万から数百万程度の分子数の系では、気体と液体の状態に無視できない変動となって現れる。現代の最先端技術はナノメートルスケールのデバイスの開発と応用に注力している。そのような系の気体と液体のふるまいを、分子数→∞の極限を前提とする解析で取り扱うことは適切ではない。そのような系の気体と液体のふるまいこそ、本研究が主題とするゆらぎに直面するものであり、そのようなゆらぎとナノメートルスケールのデバイスを外側から取り囲む大きなスケールの運動とを接続する漸近理論が必要となる。 具体的には、直方体の計算セルを用いて、その中央部にLJ分子からなる液膜を置き、周囲を同じ分子の蒸気で満たす計算を行った。分子間力ポテンシャルには、カットオフ半径を5とする微分連続型LJポテンシャルを用いる。運動方程式の積分にはleapfrogスキームを用いて、計算セルの全面を周期境界条件としてNVE一定の計算を行う。計算セルの大きさは、気体領域の縦方向の長さが平均自由行程の10倍程度になるように十分に大きく設定している。一方、横方向の長さは平均自由行程の最大4倍程度とする。これによって、巨視的な意味で空間1次元問題を扱うことになるが、これは分子気体力学におけるKnudsen層解析と整合する設定である。ゆらぎを議論するために長時間計算の妥当性も確認した。全エネルギー保存は8桁以上、時間可逆計算は10万ステップ程度である。
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