2018 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノチューブ界面での電子輸送-ユビキタスガスセンサーへの道-
Project/Area Number |
18K18826
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 修平 広島大学, 工学研究科, 准教授 (60379899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千足 昇平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50434022)
井ノ上 泰輝 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00748949)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の直接的な目的は、カーボンナノチューブ(CNT)を利用した超低電力ガスセンサーを実現するためにガス分子吸着による応答メカニズムを解明することである。吸着平衡定数の計測と初期応答の測定によりCNTへのガス分子吸着の基礎特性を調べる。広い意味での目的はナノスケール界面での電子輸送を明らかにすることであり、エレクトロニクスや生体医工学の分野への波及・貢献において期待できる。現在主流のガスセンサーは消費電力が大きく、電源から独立して使用することができない。これは分子吸着によるキャリア濃度の変化を利用するため反応性を高める必要があるからである。小型化による対応が行われているが既存技術の延長で限界が見えている。本研究で対象とするセンサーはCNT-CNT界面でのキャリア移動度の変化を利用するため加熱電源が不要、且つ応答原理に吸着ガス分子の3つの物理特性(分子直径、吸着エネルギー、誘電率)が影響するため単独で分子種の特定が可能となる。これは現時点では実現していない夢の技術である。 今年度はガス分子吸着直後の応答と高感度化への検討を行った。極性分子と無極性分子とで薄膜吸着直後の応答が全く異なることが観察された。これは今までだれも報告していなかった現象で実用化に向けては重要な知見となる。無極性分子に関しては吸着直後の非常に短い時間だけであるが過剰な応答を示した。もしこれが一般的に適用できるのであればガス分子の種類を特定するのに応用することが可能となる。さらに好感度化への検討であるが薄膜の厚みに対する応答の違いを実験的に検討した。厚みが増すにつれてガス分子にさらされる割合が減少するためか感度が低くなることが確認された。しかし薄膜の隙間と分子の大きさとを比較すると妥当な検討とはいえず今後さらに検討すべき課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複雑な機構をとらずともメカニズムに関して十分な検討が可能であることがわかりよりスムーズに研究を遂行することが可能となった。薄膜の厚みへの検討し関してはすでに論文を準備中であり半年以内に公表が可能と考えている。分担研究者との連携も十分とれており研究はかなり順調に進んでいるといえる。 これまでスピンコート法により薄膜を作成していたが、分担者の技術である吸引ろ過による薄膜合成を行ったところスピンコート法に比べてはるかに膜厚は大きいものの感度が上がった。これに関しては現在検討中である。吸引ろ過法によるもののほうが作成したサンプルのハンドリングが良く、応用を考えた時に望ましいものである。今後はなぜ感度が上がったかを検証し、モデル化することで実用化につながる。
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Strategy for Future Research Activity |
吸引ろ過により厚みの異なるナノチューブ薄膜を作成し傾向を調べていく。スピンコート法に比べて膜の均一性に問題がある恐れがあるためまずは薄膜の均一性を調べ、膜の中央部と端部でシート抵抗の値が5%以内の差になるように作成し実際の検討に進む。 測定するガス分子は、水、二酸化炭素、エタノール、メタンなど日常的なものを予定している。これまでは真空容器の中で計測していたがより現実的な計測場として今後は空気中での計測も行う予定である。
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Research Products
(4 results)