2018 Fiscal Year Research-status Report
molecular selective phonon spectroscopy at amorphous interface by inleastic neutron scattering
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18K18828
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中川 洋 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (20379598)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 中性子非弾性散乱 / フォノン / ナノ熱計測 / アモルファス / 分子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
「タンパク質+水」の2成分系で、温度や水分量を段階的に変えた試料の中性子非弾性散乱スペクトルの解析を行った。その結果、高エネルギー振動スペクトルにはあまり変化は見られない一方で、低エネルギー領域に顕著な違いが確認された。振動状態密度を求めたところ、デバイの周波数2乗法則からの過剰振動が確認できた。一方、様々な水分量で行ったタンパク質の分子シミュレーション結果から、水分量の増加に伴って変化する水和水の動態を解析した。その結果、水分量の増加に伴う水和水の水素結合のクラスターの水素結合状態の変化が水素結合の寿命に関係していることが分かり、それが低エネルギーの振動状態密度との関連性が示唆された。また、水素結合のネットワーク形成によってそのダイナミクスが変化することが分かった。また同位体ラベル法によって水和タンパク質から水和水の情報を分離することが、水和水のフォノン解析に有効であることを示唆するデータが得られている。さらにアモルファス状態の水和タンパク質のテラヘルツ周波数領域の中性子非弾性散乱スペクトルに対する圧力効果を調べ、分子シミュレーションによって分子構造に対する圧力変化を調べたところ、加圧によるタンパク質内部の空隙変化が中性子非弾性散乱スペクトルの変化と相関がよいことを見出した。これらの知見は、今後「タンパク質+水+糖」の3成分系での研究において、中性子散乱実験や分子シミュレーションによる解析によりフォノンの観点から水和状態を解析していくための手掛かりとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
示差走査熱量計(DSC)やフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)による解析と、分子シミュレーションや中性子散乱データとを総合して議論できる状況になり、ガラス転移と水和水のフォノンの関係性の解明にむけた解析が進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、DSCやFT-IRも用いてデータ解析を進めることで、中性子非弾性散乱で観測されるフォノンの詳細な解析を進める。そして、水和水のフォノン物性が蛋白質の安定性とどのように関係するかの解析等を通じて、ナノ熱物性と生体保護物質の保護作用との関係性などを議論する。
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Causes of Carryover |
中性子非弾性散乱実験が順調に進み、計上していた分光装置を購入した実験よりも中性子非弾性散乱実験の実施を優先させたため。次年度では、翌年度分として請求した助成金と合わせて本来予定していた装置などの物品を購入する。
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Research Products
(4 results)