2018 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of ultra-high-speed electromagnet based on spin-orbit interaction
Project/Area Number |
18K18849
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 知弘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60707537)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | スピントロニクス / スピン軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電流磁界ではなく、スピン軌道相互作用(SOI)を動作原理とする新しいタイプの電磁石の提案・動作実証を行い、ナノスケールでの集積化・実装が可能なコイルレス磁気デバイスエレクトロニクスの端緒を開くことを目的とする。具体的には、強磁性薄膜と重金属の接合界面における強いSOIを介して生じるスピン軌道トルク(SOT)を用いて、ランダムな多磁区構造と単一磁区構造という状態間のサブナノ秒でのスイッチングを最終目標とする。 本年度は、①SOTによる多磁区状態→単磁区状態の変化を実証、②強磁性体/非磁性体界面への酸化層導入によるSOTの増強、に成功した。 ①については、Co/Pt系を用いてキュリー温度が室温付近(およそ370K)にある試料を作製し、350K付近において多磁区構造が安定となるような状況を作りだした。そこに直流電流を印加しながら異常ホール抵抗を測定したところ、電流強度に応じてホール抵抗が変化し、ある電流値以上では飽和するような様子が見られた。飽和状態から電流を印加したまま温度を300Kまで下げていったところ、単磁区状態になっていることがわかった。これにより、本研究目的の一部は達成されたことになる。 ②については、Co酸化層をCoとPtの間に挿入することで、SOTの大きさが数倍に増強されることがわかった。スピン流の注入効率はあまり変化していないことから、この結果はラシュバ効果がSOTに寄与していることを示している可能性がある。より大きなSOTを得るために界面に異種元素の挿入が有効であることを示しており、材料設計における重要な指針となる結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
①SOTによる多磁区状態→単磁区状態の変化を実証、という研究目的の一部が達成されたのみならず、②強磁性体/非磁性体界面への酸化層導入によるSOTの増強、という結果も得られた。②については当初予定していなかった成果であり、SOTをいかにして増強するかを検討している中で得られたものである。本研究の達成において極めて重要な知見を得られたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
多磁区構造から単磁区構造へのサブナノ秒スケールでのスイッチングが最終目標である。そのために、昨年度に20GHzまでの高周波電圧を印加可能な信号発生器を導入した。本年度は、高周波電流を印加しながら、異常ホール測定あるいはトンネル磁気抵抗測定を用いた実時間測定によりナノ秒領域でのSOTによる磁区構造変化を測定していく予定である。
|