2018 Fiscal Year Research-status Report
光誘電効果のメカニズム解明と新しい光機能性誘電体素子材料の創出
Project/Area Number |
18K18855
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
谷口 博基 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (80422525)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | 誘電体 / 光誘起現象 / 光電効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
優れた光誘電効果を示す物質(光応答性誘電体)の新規開発と、光誘電効果のメカニズム解明が本研究課題の最終的な目標である。それに向けて本年度は、①還元焼成によって酸素欠損を意図的に導入したLaAlO3の多結晶及び単結晶の合成と光誘電効果の検証を実施した。さらに、第一原理計算によって、還元焼成LaAlO3中に生じる欠陥の同定に取り組んだ。また、②Ba(Al1-xZnx)2O4における光誘電効果のZn置換率依存性を調べるとともに、分光エリプソメトリの援用によって10^12-10^14Hzの高周波数帯域での光照射下誘電測定を実施した。
①では、還元焼成LaAlO3多結晶において誘電率変化120%にも及ぶ巨大な光誘電効果の創出に成功した。また第一原理計算によって、本研究で採用した合成条件下ではLa欠陥と酸素欠陥の対が最も安定に生じる欠陥であり、そのうち酸素欠陥が光誘電効果に主要な役割を果たすことを示唆する結果を得た。一方、還元焼成LaAlO3単結晶では光誘電効果を観測されなかった。これに関しては、多結晶と合成する条件が違うため生成する欠陥種が異なる可能性が考えられる。次年度以降、単結晶合成の条件と光誘電効果の相関を詳細に調べる必要がある。
②では、Zn置換率5%のBa(Al1-xZnx)2O4(x = 0.05)多結晶試料において、誘電率変化30%の比較的大きな光誘電効果を得ることに成功した。また、分光エリプソメトリによる光誘電効果測定では、LCRメータによる通常誘電測定で少なくとも10^6Hzまで観測される光誘電効果が、10^12Hz以上の周波数領域では観測されないことを明らかにした。この結果は、光誘電効果の起源としてGHz領域に緩和周波数を有する光誘起電気双極子の可能性を提起している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究提案当初に光誘電効果の発現機構に関する知見を欠陥科学の観点より得ることを計画していた。それに対して本年度、還元焼成下でLaAlO3中に安定的に生成する欠陥種がLa欠陥と酸素欠陥の対であることを第一原理計算によって明らかにし、そのうち酸素欠陥に起因する光学遷移エネルギーが光誘電効果の照射光エネルギー依存性を整合するという結果を得た。これによって、光誘電効果において酸素欠陥が重要な役割を果たすことを明らかにした。この成果は、以後の新規光誘電体探索および物性最適化における重要な道標となるものであり、本研究課題の初期の段階にこの成果が得られたことは当初の計画以上に大きな進展である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は前年度の成果に基づいて、LaAlO3単結晶における光誘電効果の検証に特に集中して研究を進める。単結晶は前年度に引き続きフローティングゾーン法によって育成する。得られた単結晶を大気中で段階的にアニーリングすることで酸素欠損量をコントロールしつつ、光照射下の誘電測定を実施して光誘電効果を検証する。それと並行して、放射光X線吸収等によって第一原理計算によって明らかにした酸素欠陥の実験的な検証に取り組む。これに関しては、実験の難易度がより現実的な、光照射下のオペランド測定を必要としない永続的光誘電効果を示すBa2AlO4系材料より着手し、状況に応じてLaAlO3系におけるオペランド測定を検討する。得られた成果は随時国内外の学術会議等において発表し、そこでの議論を実験計画にフィードバックすることで研究を効率的に実施する、
|
Causes of Carryover |
第一原理計算によって光誘電効果に主要な役割を担う欠陥種に対する重要な知見が得られ、それによって研究が当初計画以上に進展して研究計画に微変更が生じた為。
|