2018 Fiscal Year Research-status Report
光ワイル点に起因するトポロジカルエッジ状態を利用した半導体円偏光発光素子の実現
Project/Area Number |
18K18857
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 駿 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 助教 (60731768)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | トポロジカルフォトニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半導体カイラルフォトニック結晶を用いて、トポロジカルな性質を有する光ワイル点を形成し、それに付随するトポロジカルエッジ状態を利用して、円偏光発光する光トポロジカル能動素子を実現することを目的としている。1年目であった当該年度では、カイラルフォトニック結晶における光ワイル点を数値的に実証した上で、次年度以降の実験に向けてフォトニック結晶構造の最適化を図り、その構造を半導体で実際に作製することを目指した。 まず、光ワイル点の数値的な実証については、実空間局所基底を用いた手法や平面波展開法、有限差分時間領域法といった計算手法を用いて、カイラルフォトニック結晶における光ワイル点の存在を示した。また、波数を変化させることでワイル点の縮退を解くと、トポロジカルエッジ状態が現れることも確認した上で、そのエッジ状態が強く円偏光に偏極していることも示した。さらに、次年度以降の実験において他のバンドの影響を抑えるために、フォトニックバンド構造においてワイル点が孤立するようなフォトニック結晶の最適な構造パラメータを得た。これらの結果は国内・国際学会でそれぞれ3件、1件発表したほか、論文も出版した。 次に、以上の構造最適化に基づいて、実際に試料作製を行った。電子線リソグラフィおよびドライ・ウェットエッチングによって、10ミクロン四方のGaAs薄膜を作製し、マイクロマニピュレーション法によって、この薄膜を1層ずつ16層積層することで、半導体カイラルフォトニック結晶の作製に成功した。また、次年度以降の光学測定の際に、より大きなサイズのカイラル構造が必要になる場合を想定し、15ミクロン四方の大きさの試料作製も行った。これらの結果は国際学会で1件発表し、論文も出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、光ワイル点の数値的な実証については、実空間局所基底を用いた手法や平面波展開法、有限差分時間領域法といった計算手法を用いて、カイラルフォトニック結晶における光ワイル点の存在を示した。また、波数を変化させることでワイル点の縮退を解くと、トポロジカルエッジ状態が現れることも確認した上で、そのエッジ状態が強く円偏光に偏極していることも示した。さらに、次年度以降の実験に向けて他のバンドの影響を抑えるために、フォトニックバンド構造においてワイル点が孤立するようなフォトニック結晶構造が必要であることから、様々な構造パラメータについて数値計算を行い、その最適値を得た。 以上の構造最適化に基づいて、当初の予定どおり、実際に試料作製を行った。電子線リソグラフィおよびドライ・ウェットエッチングによって、10ミクロン四方のGaAs薄膜を作製し、マイクロマニピュレーション法によって、この薄膜を1層ずつ16層積層することで、半導体カイラルフォトニック結晶の作製に成功した。 以上の成果から、本研究は当初の研究計画に対しておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、作製した試料を実際に測定し、光ワイル点を実験的に実証する。具体的には、波長可変な入射レーザ光に対して、作製したカイラルフォトニック結晶を回転させて、角度分解透過スペクトルを測定することで、得られるバンド構造からワイル点を示す。 ただし、本研究で扱うような微小構造の顕微光学測定では、一般的に試料への励起光の集光や、その応答の局所的な検出が難しい。得られた測定結果には複数の現象が混合されて得られることが多く、ワイル点を示唆する結果のみを抽出することは困難が予想される。場合によっては、フォトニック結晶におけるスケーリング則を利用して、10cm四方の大きなカイラル構造を用意し、対応する波長のマイクロ波に対する応答を観測する。構造が十分に大きいため、マイクロ波の入射や検出の位置を正確に制御でき、難易度の高い顕微光学測定に対して試験的な実験として適当と考えられる。
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Research Products
(7 results)