2018 Fiscal Year Research-status Report
高温超伝導マグネットのキーテクノロジーとなる革新的即時遮断・保護技術の開発
Project/Area Number |
18K18864
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東川 甲平 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (40599651)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 高温超伝導マグネット / エネルギー貯蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高温超伝導マグネットのキーテクノロジーとなる革新的即時遮断・保護技術の開発である。超伝導応用は他の技術では為し得ないほどの高磁界を発生できる電磁石応用がその根幹を支えており、高温超伝導線材の開発進展によって、従来の低温超伝導線材による電磁石応用が一変しようとしている。具体的には、飛躍的な高磁界化と冷却負荷の低減が期待されている。一方、高温超伝導マグネットは、その保護技術に大きなボトルネックを抱えており、あと少しのところでその応用展開が行き詰っている。そこで本研究では、これまでのコンセプトにとらない革新的な保護技術の提案により、その問題を解決するばかりか、高温超伝導マグネットの設計制約を根本から取り去ることによって、超小型高磁界マグネット実現の可能性を提示する。平成30年度は、この高磁界マグネット応用の1つとして、エネルギー貯蔵機能を有する超伝導ケーブルを対象とし、本保護技術が可能とする高電流密度通電による高磁界化の定量検討と大電流通電手法の提案を以下の通りに行った。
(1)高電流密度通電による高磁界化の定量検討:本保護技術による高電流密度通電により、液体水素温度(20 K)程度の冷却が必要であったエネルギー貯蔵超伝導ケーブルが、サブクール液体窒素温度(65 K)で実現できる可能性を示し、高温超伝導マグネット応用の適用先の飛躍的な拡大を示した。
(2)大電流通電手法の提案:本保護技術の鍵は等価インダクタンスの低減によるものであるが、そのための巻線の巻数の低減を可能とする大電流通電電力変換回路の提案を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成には、巻線構造の設計と通電の制御が必要であり、上述の2項目はそれぞれに対応していることから、本研究は順調に進んでいる。 特に、近年の酸化物系高温超伝導線材の特性向上とその複雑な電流輸送特性を反映した巻線設計は、他では困難なものである。これは、巻線に必要な長尺線材に対して、様々な温度や磁界印加環境下の特性を評価することが、当グループでしかできないことに起因する。さらに、この特性を物理モデルに基づいてモデル化することにより、系統的な巻線設計が可能となった。 また、通電の制御に関しては、巻線保護時の電圧の許容値を超えないことが制約となるが、この電圧を制限した上で、高速に電流を制御させる手法を提案し、数値シミュレーションによってその有効性を示した。 以上により、当初の期待通りに、順調に成果が得られているものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の成果により、巻線の設計と制御手法の開発を行うことができた。平成31年度は、作製中の巻線を完成させ、実験的に本成果を実証することを目指す。具体的には、その高い特性から高磁界マグネット応用に期待されているものの遅いクエンチ伝搬特性から早急な保護の必要な希土類系高温超伝導線材を用い、設計した巻線構造のコイルを作製する。補助巻線を加え、電流の即時遮断試験を行い、電圧の制限の観点からこれまでに困難であった保護技術として実証する予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度末に購入予定の超伝導線材の購入を次年度に延期したため。ただし、これによる研究の遅延はない。
|
Remarks |
平成31年度 文部科学大臣表彰 若手科学者賞 受賞
|