2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K18870
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山下 太郎 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (60567254)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 超伝導 / 磁性体 / 近接効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、前年度に得られた超伝導膜及び強磁性膜の特性評価結果や構築したナノボルト微小電圧測定系を元に、スピン誘起ウィークリンク(Spin-WL)素子の作製・評価を進めた。フォトマスクによる素子のパターニング工程に加え、より柔軟かつ効率的な素子作製を行うためマスクレス露光装置も併用したプロセスを確立した。基本的な作製プロセスは以下の通りである。(i) 膜厚10-20nmの超伝導体NbNを直流マグネトロンスパッタリングにより成膜。(ii) ボンディングパッド用の膜厚100nmのNbNをリフトオフにより積層。(iii) 薄膜NbNをフォトリソグラフィ及び反応性イオンエッチングにより4端子測定用ワイヤパターンに加工。(iv) 交流または直流マグネトロンスパッタリングにより、強磁性体(NiFeもしくはCuNi)を局所的にNbNワイヤ上へ成膜し完成となる。これまでの複数回の試作から、線幅2μm以上の強磁性体をリフトオフで再現性良く積層可能であることを確認した。まず、0.7-5μmの様々な線幅のNiFeを付加したNbNワイヤに関して、4.2 Kにおける電流-電圧特性の評価を行った。その結果、NbN上に積層されたNiFeの線幅が大きくなるにつれ、有限な電圧状態へ転移する臨界電流値が減少する傾向が得られた。観測された超伝導電流がジョセフソン電流かどうかはより詳細な測定と解析が必要だが、超伝導体への局所的な逆近接効果に関する重要な知見となる。さらに磁性体の違いによる逆近接効果への影響を調べるため、NiFe等の一般的な強磁性体よりも磁性の弱い、希釈磁性体CuNiを用いたSpin-WL素子を作製し評価を行った。その結果、NiFeの場合と異なりCuNiの付加による臨界電流の抑制は観測されず、今後のSpin-WL素子実証に向けた磁性材料及び設計に関する技術基盤が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強磁性体微小パターンのリフトオフプロセスも含め、安定して再現性良くSpin-WL素子を作製できるプロセスの確立に成功し、様々な設計の素子作製及び評価が効率的に可能な状況となっている。またNiFe膜を積層した素子に関しては、期待していたNbNワイヤにおける臨界電流の抑制や、NiFe領域の増大による臨界電流の減少も観測しており、順調に研究が進展していると言える。またCuNi膜の素子に関しては、明瞭なNbNワイヤの臨界電流抑制は観測されなかったが、これはCuNiの磁性がNiFeに比べて弱いためある程度予想していた結果である。以上これまでに得られた結果は、Spin-WL素子に最適な磁性材料及び設計を明らかとするための重要な指標であり、逆近接効果によるジョセフソン効果の発現に向けた知見が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、NbN, NiFe及びCuNi膜厚を変化させた場合のNbNワイヤへの逆近接効果への影響を系統的に調べ、また臨界電流の磁場依存性等の測定を通じて、Spin-WL素子におけるジョセフソン効果の発現・実証を目指す。さらに、優れた面内均一性が期待される単元素強磁性体Coに関しても検討を開始しており、必要に応じてSpin-WL素子へ導入する。強磁性体の線幅に関しては、最小で0.7μmのパターン作製に成功しており2μm以上は再現性良く作製できる状況だが、今後サブμm以下の強磁性体が必要と判断した場合にはエッチングによる加工や電子線描画装置の導入も検討する。
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