2018 Fiscal Year Research-status Report
弾性波と電磁場応答を統合したコンクリート中鋼材表層部の腐食の非破壊評価手法
Project/Area Number |
18K18883
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鎌田 敏郎 大阪大学, 工学研究科, 教授 (10224651)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺澤 広基 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50750246)
内田 慎哉 富山県立大学, 工学部, 准教授 (70543461)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | コンクリート中鋼材腐食 / 高周波交流磁場 / 電磁場応答 / 電磁場検出センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的を達成するため、H30年度は以下のⅠ、Ⅱのテーマを設定し、研究・開発を行った。 Ⅰ.鋼材腐食の初期段階を精度良く検出可能とする磁場発生方法の開発、Ⅱ.微小な弾性波と電磁場応答を高感度に検出できる受信システムの開発。Ⅰでは、大電流により磁場の急峻な立上がりを実現するパルス電流発生装置を実現するため、まずは飽和磁束の下で数kHz~数100kHzの交流磁場を印加できる計測システムの開発を行った。また、Ⅱでは、動的磁場の影響をキャンセルし、鋼材表層で発生する10μ~100μTレベルの微小磁場を選択的に検出可能な計測条件の評価を行った。また、対象とする周波数領域において十分な検出感度を有するサーチコイル方式の電磁場検出センサを構築した。次に、交流磁場を発生する電流を参照信号とし、電磁場検出センサで計測された電磁場応答のロックイン検波(位相敏感検波)により、鋼材表層性状の変化を高精度に測定する高度信号処理手法を試み、性能評価を行った。また、これらの評価対象として、コンクリート中鋼材の評価モデルを電食により作製し、鋼材腐食の初期段階における腐食状況を大気中で再現することにより、磁場発生方法、電磁場検出センサの基本性能評価に供した。 具体的には高周波交流電源(~500kHz)を適用し、位相敏感検波方式を導入することにより、平板鋼材を対象に薄板鋼材により腐食層を模擬し、腐食による鋼材表面の形状変化(厚さ0.1~1mm)が電磁場応答に与える影響を評価した。また、鋼材を電食により腐食させた試験体において、電食による減肉厚約50μmにて鋼材表面の形状変化が検出できることを確認した。また、腐食条件を変え腐食部の大きさの検出限界の把握を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高周波交流磁場の電磁場応答に関する基礎評価を優先し、平板鋼板を対象とした評価段階にある。今後、具体的な構造物を対象としたコンクリート中鋼材に対して評価を進める。 一方、H30年度研究の結果、弾性波応答による腐食層の検出よりも電磁場応答による腐食層の検出の方が検出感度が高いと判断されたため、今後は電磁場応答による腐食層の検出を優先して研究開発し、実験による評価も電磁場応答の検出評価を主体に推進する予定である。以上の結果、さらに検出感度の改善が必要と判断された場合は、弾性波応答による腐食層の検出についても追加検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
H31年度は、実構造物に対応した評価対象ごとに手法の検討、評価を行う。具体的な評価対象としては、A.コンクリート埋設鋼板(平板、鋼管)、B.コンクリート中鉄筋を対象とする計画である。 研究テーマとしては、①鋼材腐食の初期段階を精度良く検出可能とする磁場発生方法の検討において、電磁場入力条件(発振周波数、励磁コイル形状・巻数)の最適化、磁路の最適化、コア付き励磁コイル(フェライト、電磁鋼板コア)による検出精度の改善、検出感度の定量的評価を実施予定。 ②微小な電磁場応答を高感度に検出できる受信システムの検討において、計測配置の最適化(理論検討、解析を援用)、差動型磁気計測回路の評価、磁気勾配検出回路 (グラジオメータ方式)、腐食を模擬した局所電流ループモデルの理論化、解析(PHOTO-eddy)を実施予定。 ③電磁場応答から鋼材腐食を検出するための信号処理・データ解析システムの開発においては、供試体(A、B)の製作、腐食ステージの評価、腐食範囲の可視化検討を進める予定である。当初、弾性波と電磁場応答を統合的に評価することにより、鋼材腐食の初期段階から進展期、加速期に至る諸状況を多面的に把握・ 可視化できる統合型信号処理・データ処理システムの開発を行うとしていたが、電磁場応答の振幅・位相差情報を評価指標とし、健全な鋼材部の指標値に対して局所的に変化する領域をマッピング処理することにより、腐食段階、腐食範囲を可視化する手法で研究評価を進める。
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Causes of Carryover |
①鋼材腐食の初期段階を精度良く検出可能とする磁場発生方法の検討において、大電流により磁場の急峻な立上がりを実現するパルス電流発生装置につき、H31年度も継続して検討を進める。このため、H30年度実施額の一部をH31年度において使用予定。また、磁路の最適化、コア付き励磁コイル(フェライト、電磁鋼板コア)による検出精度の改善、磁路の改善による検出感度の評価をH30年度の検討に引き続き、H31年度も継続して実施予定。 ②微小な電磁場応答を高感度に検出できる受信システムの検討において、差動型磁気計測回路の評価、磁気勾配検出回路 (グラジオメータ方式)、腐食を模擬した局所電流ループモデルの理論化、解析(PHOTO-eddy)をH31年度実施予定。 ③電磁場応答から鋼材腐食を検出するための信号処理・データ解析システムの開発、供試体(A、B)の製作、腐食ステージの評価、腐食範囲の可視化検討を予定通り進める予定である。
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