2019 Fiscal Year Research-status Report
Isolation of noble anammox bacteria possessing high tolerance of oxygen and light to develop soil remediation technology
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18K18887
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
川越 保徳 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 教授 (00291211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 紘晃 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 助教 (80637182)
濱 武英 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 准教授 (30512008) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | アナモックス / アナモックス細菌 / 光耐性 / 酸素耐性 / 土壌修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
水環境分野におけるアナモックス関連の研究は進展がめざましいが,土壌・底質環境におけるアナモックスの研究事例はいまだ少なく,特にアナモックス反応を原位置での土壌浄化に対して積極的に応用,展開しようとした研究は無い。一方,開放系である自然環境下でアナモックスを活用するには,酸素や光,温度といった自然環境の変化に柔軟に対応でき,土壌や底質環境での生育,増殖に秀でたアナモックス細菌の利用が望ましいが,これまでにそういった観点でアナモックス細菌を探索・培養を試みた研究事例は無い。そこで本申請研究では,酸素,光,温度変化に高い耐性を有する新たなアナモックス細菌を見いだし,その集積培養の確立を目的としている。 昨年度は,畑地土壌や水田土壌を種試料として,アナモックス細菌の探索を行ったが結果が得られなかったため,本年度は,熊本県内にある,オキシデーションディッチ(OD)法を採用する廃水処理施設の汚泥を種試料として実験を行った。この結果,一つの試料について,好気性条件下(DO>8.0 mg/L)でも,嫌気条件下と同様の窒素除去率が認められたことから,細菌叢を明らかにするとともに,連続培養でのアナモックス細菌の集積を検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は好気性環境試料の例として,3種類の畑地土壌,および3種類の水田土壌を種試料として,回分試験にてアナモックス反応の発現を調べることでアナモックス細菌の探索を行ったが,約3ヶ月間の間にアナモックス反応と思しき結果は得られず,次世代シーケンサーを用いた細菌叢解析においても既知のアナモックス細菌は検出されなかった。そこで,本年度は,熊本県内にある,オキシデーションディッチ(OD)法を採用している下水(およびし尿)処理施設から,ディッチ内の汚泥を採取して種試料とし,逐次回分培養にてアナモックス細菌の探索,および集積を試みた。同一のオキシデーションディッチ施設の異なる場所から4か所で汚泥を採取したもの,および別の3カ所のオキシデーション施設から各々汚泥を採取して実験を行った。逐次回分培養4ヶ月以上継続した結果,一つの試料を除いては好気性条件下では窒素除去能が10%を下回り,Anammox反応が推定される窒素除去は認められなかった。一方,一つの試料については,溶存酸素濃度(DO)が8.0 mg/Lを超える条件でも,嫌気条件下と同様の窒素除去率(40%以上)が認められていることから,現在,細菌叢解析を進めるとともに,連続培養への切り替えを準備しているところである。 また,本研究では,酸素耐性の高い新規なアナモックス細菌の探索,集積培養系の構築とともに,既往のアナモックス細菌についても酸素による影響を調べている。これについては,研究室で培養,維持している海洋性と淡水性の2種類のアナモックス細菌について比較検討を行っているが,これまでの結果から,淡水性アナモックス細菌は,海洋性アナモックス細菌よりも酸素への耐性が高い,もしくは酸素の変化に対してより柔軟に対応できる可能性を示唆する結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
オキシデーションディッチから採取した6種類の試料(汚泥)の内,一つの試料で酸素耐性の高いアナモックス細菌が存在している可能性が示唆されたため,現時点での本試料について細菌叢解析を行うとともに,連続培養によるアナモックス細菌の集積培養を進める。また,今年度は県外のオキシデーションディッチ施設から種試料を入手し,実験を実施予定であったが,現在,新型コロナウイルスによる極度な移動制限により,これが困難になっていることから対応を検討している。また,海洋性と淡水性アナモックス細菌の酸素耐性については,一定の結果が得られたところで結果をまとめ,学会発表などで研究成果を報告する予定である。
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Causes of Carryover |
逐次回分実験の結果が出るのが遅く,また,種試料に用いるオキシデーションディッチ施設との連絡,協議に時間を要したため,主に細菌叢解析や,窒素安定同位体分析などの分析にかかる費用が必要でなかったためである。今年度は,上記の分析費用が発生するため,一定の予算を使用予定である。しかし,新型コロナウイルスの状況を鑑み,今後の研究計画と予算執行については再度検討する必要があると考えている。
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