2021 Fiscal Year Research-status Report
Home ownership, inheritance and social stratification
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18K18900
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平山 洋介 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70212173)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 住宅相続 / 住宅資産 / 持ち家 / 世代間関係 / 社会階層 / 住宅政策 / 生前贈与 / 空き家 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会を形成し、高齢者人口がさらに増大する日本において、住宅事情の将来を展望しようとするとき、重要なのは、遺産相続による持ち家ストックの世代間移転がどのような役割を果たすのかを知ることである。人口高齢化にともなう死亡の増大、高齢者の高い持ち家率、少子化による兄弟姉妹の減少によって、住宅相続は大幅に増えると考えられている。しかし、この住宅相続についての既往研究はほとんどなく、そのおおまかな実態さえつかめていないのが現状である。本研究は、住宅相続の実態を明らかにし、その階層化にとくに注目するところから、住宅事情を形づくる新しいメカニズムを解明しようとするものである。この目的に沿って、これまでに理論検討、ミクロデータ分析、住宅相続の経験者に対するアンケート調査などを実施した。今年度は、それらの成果を再分析したうえで総合し、住宅相続の実態の全体像を整理するとともに、それが住宅事情の全体に与えるインパクトについて考察した。その結果、住宅相続の内容は、相続人の社会階層と明確に相関すること、すなわち、より高所得の世帯は、資産価値のより高い住宅を相続し、それを賃貸市場に出すことで、所得をさらに上げている場合が多いこと、他方、より低所得の世帯は、資産価値の低い住宅を相続し、そこに自ら居住するか、あるいは空き家のままとしているケースが多いこと、したがって、住宅相続は、住まいに関する社会の階層化をいっそう促進する強いドライバーとなっていることなどが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画に沿う研究をおおむね実施してきたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、遅れている面がある。しかし、次年度に研究を完成させる目途は立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
実施すべき調査などはすでに完了しており、今後は、そのまとめを行うとともに、研究成果が既存の住宅理論に対してどういう意味をもつのかを考察する。これによって、これまでほとんど未解明であった住宅相続の実態を初めて実証するとともに、そこから住宅理論の再構築の方向を示すことが可能になる。とくに住宅に関する社会階層形成、資本としての住宅を利用する階層の形成、空き家の増大の説明などに関し、理論と実証の双方から貢献できると考えられる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、予定していた作業が困難になったため。次年度では研究の総合的なまとめに向けて、必要な作業を実施する。
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