2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K18904
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
海野 聡 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00568157)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | メンテナンス / 修理 / 復元(復原) |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は全体計画の2年度目にあたり、2018年度から継続しておこっている研究会を2回(第4回・第5回)、奈良文化財研究所にておこなった。近世のメンテナンスに関するテーマをあつかった回と修理技術者による現存建築をもとにしたメンテナンスの実態に関する研究会である。 前者では、「江戸幕府の小普請方は建築修理部隊なのか?」と「資源保全からみた近世における建築の維持と再利用」というテーマで、後者では「重要文化財仁和寺観音堂の保存修理と修理履歴」と「国宝当麻寺西塔の修理履歴」というタイトルで発表をいただき、これらについて議論した。 また2月には「復元学の意義と課題」というシンポジウムを東京大学工学部1号館にて開催した。本シンポジウムでは、修理において重要な要素となる復原について、復元学の意義と課題という視点から各分野の第一線で活躍する研究者を招き、理解を深めた。文化遺産のオーセンティシティーの点からも、文化遺産を次世代に伝えるうえでも復元について、学術的に整理・議論した意義は大きい。 また年度末には2020年度の研究会およびシンポジウムの計画の準備をおこなった。研究会については、第6回目で最終回にあたり、特定寺院におけるメンテナンスの歴史について検討するという方向性を打ち出した。 なお継続的に作業を継続している修理工事報告書の分析にもとづく古代建築の修理技術に関する解読は継続して行っており、法隆寺を中心にその情報の蓄積を図った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究会の開催による成果は当初の計画通りに進展しており、おおむね順調である。さらに当初の計画にはなかった2年度目でのシンポジウムの開催をおこなうことができ、この点では想定以上の成果をあげている部分もある。 いっぽうで、コロナウィルスにより、図書室などの資料の使用の制限が生じており、資料取集の面ではやや遅れているといわざるを得ない状況である。次年度以降もこの状況はすすむとみられ、2020年度もこの状況に応じた成果が目標となるとみられる。 これらを総合的に勘案すると、おおおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
オンライン化による研究会の開催を進めるが、この作業や費用が追加で発生することが予想されるため、これに対応する。 全体の計画としては、多人数の集まるシンポジウムの開催ができないことも視野に入れつつ、研究会メンバー内に限定した総括研究会の可能性も模索する。 また修理工事報告書にもとづくデータ収集作業などについては、新型コロナによる社会状況に応じて、可能な範囲での成果を目標とする。これにともない、最終成果についても、総額予算の微減に影響とともに勘案し、費用や労力のかかる出版形態に必ずしもこだわらず、柔軟に対応する。
|
Causes of Carryover |
本年度、計画していた資料収集について、学生アルバイトの雇用を予定していたが、学生の論文提出などの状況から進行の変更の必要が生じた。そのため次年度にこの資料集作業を補完することで対応したい。 くわえて、新型コロナの影響を受け、修理現場の調査・見学、研究会の中止があり、延期せざるを得ない状況となった。これらについても、コロナ感染の状況が改善し次第、赴くことを計画している。コロナ感染による状況の変化は研究代表者の責によるものではなく、妥当な計画変更であると考える。
|