2021 Fiscal Year Annual Research Report
Basic research on the construction of the history of building maintenance
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18K18904
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
海野 聡 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00568157)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | メンテナンス / 解体修理 / 復原 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、メンテナンスの体制と社会背景(目的Ⅰ)、個別寺院における建築メンテナンスの通史(目的Ⅱ)、現存建築のメンテナンス事例の蓄積(目的Ⅲ)、建築メンテナンスの歴史学の手法の確立(目的Ⅳ)、の4点を大きな目的として設定した。その背景には、建築メンテナンスに関する現代の社会的要求と既往研究の不足という問題点がある。前者については、主にコンクリート造を中心とする建造物のメンテナンスが社会問題化しており、後者については、新築に焦点を絞ってきた建築史の功罪である。また歴史的建造物の修理を担ってきた修理技術者と学術の関係はほとんどなかった。それゆえ、建築メンテナンスの歴史を学術的にとらえなおすことは、新たな研究分野の開拓という点で高い意義があり、実務者である修理技術者との協力・検討体制の構築は、社会と学術の連携という点で、挑戦的なテーマである。 この研究目的に対し、古文書の解読、過去の修理情報の情報収集・蓄積を通して、古代から近世のメンテナンスの実情を検討した。具体的には、前者に対し、南都七大寺を中心とする寺院の修理に関する情報収集を行った。また後者については国宝・重要文化財の現在の解体修理によって明らかになった過去の修理履歴に関する研究会を開催し、当麻寺等の修理に関する分析を行った。 これらの成果により、前近代の多様かつ継続的なメンテナンスに関する状況が明らかになった。特に修理に対する意識が平安初期に強まって以降、必ずしも修理は定期的になされたわけではなく、またその手法も修理時の時代性を強く反映したことが見えてきた。また厳しい出版情勢ではあるが、研究成果をまとめた書籍の刊行計画を進めている。
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