2018 Fiscal Year Research-status Report
超音波を用いた過冷却解除による航空機着氷抑制技術のフィールド実証
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18K18911
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
吹場 活佳 静岡大学, 工学部, 准教授 (50435814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 大将 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (90571969)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 着氷 / 航空機 / 超音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超音波による過冷却解除を用いて氷の付着を抑制する新しい手法を提案し、これを屋外におけるフィールド実験にて実証する。 平成30年度においてはまず、研究室で実施する着氷実験において使用する冷凍庫を購入し実験を開始するにあたり必要となる実験装置の構築を行った。着氷実験を実施するには-20 ℃程度までの冷却能力と、ある程度の広さを持った冷凍庫が必須となる。また着氷は環境温度に強く影響される現象であることから、庫内温度を高い精度で一定に保持できなければならない。これらの要求を満たす冷凍庫として、福島工業製の低温インキュベータを選定し、購入した。これまでに液滴を噴霧するノズルの取り付けや、内部温度分布など基礎的な環境条件の測定を行った。 また、分担者の所属する室蘭工業大学に出向き、フィールド実証のための予備実験を行った。液滴の噴霧装置を着氷対象である円柱の上方に設置した実験装置を構築し、室蘭工業大学白老実験場屋外に配置した。実験当日、朝4時から作業を開始し、-8℃の外気温度の中で着氷実験をおこなった。円柱はアルミ製で、無垢のアルミのほか表面にケミブラストと呼ばれる化成処理によりマイクロメーターオーダーの凹凸を付けた円柱を用意し、さらにこれを撥水コーティングしたものを着氷させ、比較した。この加工により極めてぬれ角の大きな超撥水面を作成することができた。これにより噴霧された水滴が表面で跳ね返る様子が観察された。着氷量など、いまだ定量的な比較はできていないものの、着氷抑制に効果があるものと期待できる。最終的に本課題で提案する超音波による着氷抑制手法と組み合わせることにより、実用的な着氷防止装置の開発を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画では、実験室における開発とフィールド実験を実施するとなっている。実験室における開発に関しては、昨年度は上記の通り冷凍庫(低温インキュベータ)を導入し、温度分布の測定など実験開始に向けた準備作業を行った。液滴を噴霧するノズルを配置し、ノズルに供給する水と空気の流量を測定するシステムを構築した。水と空気の流量の比、気水比をコントロールすることにより、液滴の径が調整できることを確認した。着氷させる対象物として、航空機の前縁部分を想定した円柱を用いることとし、これを用意した。さらに円柱表面に超撥水コーティングを施すことによりさらなる着氷の抑制を行うこととした。実験開始に向けた準備がほぼ完了しており、平成31年度初めより本格的な着氷実験を開始する予定である。 フィールド実験に関しては、研究の後半に冬場の低温環境を利用して空気流中での着氷実験を行うこととなっている。昨年度においては現地の確認と予備実験を兼ねて、2月中旬に室蘭工業大学にて静止した空気流中で液滴を噴霧する実験を行った。追加的な試みとして、超撥水コーティングをした円柱に対する着氷実験を行ったところ、先述のとおり液滴の跳ね返りが観察され、さらなる着氷抑制に貢献するものと考えられる。この他、来年度の通風実験に向け送風機を購入し、着氷実験を行うダクトの設計を行った。 以上のように、昨年度においては当初計画した内容をほぼ遂行できており「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は実験室における着氷抑制手法の開発・実証を引き続き行うとともに、室蘭工業大学白老実験場におけるフィールド試験を実施する。 実験室における着氷抑制手法の開発・実証では、昨年度までに用意した着氷環境を模擬できる実験装置(低温インキュベータ)を用いて手法の効果を検証する。着霜抑制の手法に関して、計画書で述べた超音波によるものに加え、表面処理などの手法を組み合わせることにより、さらなる着氷抑制を目指す。特に昨年度見出したケミブラスト+撥水による超撥水面を用いる方法では、これまでに有効性を示す結果が得られており、引き続き実用化に向けた検証を実施する。庫内温度、液滴径、ノズル-物体間距離などをパラメータに設定し、幅広い環境で有効な着氷抑制手法を模索する。 フィールド実験に関しては、昨年度実施した予備実験により本格的な着氷実験を行うための目途を立てることができた。今年度は送風機を持ち込み簡易的な風洞を作り、流れのある環境での着氷実験の実施を目標とする。送風機からの外気を木板と塩ビ板で作成するダクト内に導き、ノズルから液滴を噴霧して過冷却液滴を生成する。下流にアルミ製の円柱を配置し、円柱上流側での氷の成長を観察する。夜明け前から午前中にかけて実験を実施することで幅広い温度範囲での実験を行い、データを取得する。実験室での実験により有効性が確認された着氷抑制方法をフィールド実験でも適用し、実際の環境に近い条件での手法の評価を行う。
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Research Products
(1 results)