2019 Fiscal Year Research-status Report
高緯度寒冷地盤の雨慣れ度を考慮した気候変動下の豪雨災害リスク評価法の開発
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18K18915
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 達也 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60359479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒匂 一成 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (20388143)
所 哲也 北海学園大学, 工学部, 准教授 (40610457)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 地盤工学 / 豪雨災害 / 土砂災害 / 積雪寒冷地 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、地盤の雨慣れを定量的に評価すべく、年降水量の異なる寒冷地域(北海道)と温暖地域(鹿児島)の2か所でそれぞれ作製した実物大切土模型斜面にて原位置試験(サンプリング,土壌硬度測定,原位置透水試験,ベーンコーンせん断試験,簡易動的コーン貫入試験)を実施し、気象条件の違いが表層地盤の物理特性・水理特性・力学特性(粒度分布,透水係数,強度定数)に及ぼす影響を調査した。また、原位置試験結果および室内要素試験結果をもとに、斜面表層の細粒分流出を考慮した 2次元飽和/不飽和浸透流・斜面安定解析モデルを作成し、降雨履歴による斜面表層の細粒分流出および先行降雨による豪雨前の斜面内含水量の増加が斜面安定性に及ぼす影響を評価した。得られた主な知見は以下のとおりである。 ①年降水量の異なる寒冷地域および温暖地域の双方で降雨による斜面内の細粒分流出およびそれに伴う透水性の上昇が確認されたが、細粒分流出の程度は降雨強度の大きい温暖地域でより顕著であった。ただし、降雨履歴の影響は斜面表層に限定された。 ②斜面表層の細粒分が減少することで斜面内間隙水圧のピーク値および上昇速度は早まる。それと同時に斜面の安全率の低下速度も早まり、斜面崩壊時のすべり面の位置は浅くなる。この傾向は先行降雨が無い場合、より顕著に見られた。 以上より、雨慣れの一形態である降雨履歴に起因する斜面表層の細粒分流出は、地盤の保水性の低下および透水性の上昇を招き、斜面崩壊の時期と規模を変化させる可能性のあることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時に記載した本年度の研究実施計画のすべての項目について検討を実施しており、本実績報告書で記載したように、各項目について、交付申請時に記載した研究目的の達成に結びつくような具体的な研究成果があがっていることから、「おおむね順調に進展している。」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目標達成には、実験、解析、データ分析等の各側面から包括的な検討を行う必要がある。このため、本研究では、研究開発の効率性の観点から各研究者が個別に保有する研究開発力を総合して課題解決にあたっている。ただし、研究機関が複数あり、また研究期間も長期に渡ることから、各研究項目間の連携性の向上と研究内容の調整のため、情報交換と研究成果の共有などを目的とした研究の進捗状況報告会を、今年度同様、今後も年度内に数回定期的に開催しながら、本研究を推進する。
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Causes of Carryover |
研究分担者が透水試験に使用していたデータロガーが2020年2月に故障したため、残予算を用いて購入を検討しましたが、年度末の発注のため納期が間に合わず、データロガーの購入を断念しました。データロガーは研究の遂行に必要なものであり、2021年度に購入するために予算の繰越しをすることにしました。
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