2018 Fiscal Year Research-status Report
Removal of oxygen from titanium melt using hydrogen plasma arc: Challenge to 300 ppm
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18K18929
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
成島 尚之 東北大学, 工学研究科, 教授 (20198394)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 恭介 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40507901)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 脱酸 / 溶解プロセス / 高純度化 / 低コスト化 / 二段階法 / 熱力学 / 原子状水素 / 水蒸気 |
Outline of Annual Research Achievements |
チタンの用途開拓を阻む原因がその高コストにあることは広く共有されている。不純物元素として酸素を多く含有する市中のチタンスクラップやB級スポンジチタンをチタン部材の溶解原料として利用できればチタンの低コスト化のために有効である。そこで、チタン部材製造に必須の溶解プロセスへの酸素除去機能付与を目的として、チタン融体の水素プラズマ溶解に関する研究を行った。平成30年度の進捗は以下のとおりである。 (1)チタン融体の熱流動解析:プラズマアーク溶解における融体撹拌状況と融体温度分布の把握を目的に計算を行った。ソフトとしてはFluent(V19.2)を使用し、チタン融体質量を250gおよび500g、融体表面に対しての入熱を均一および不均一とした条件で、溶融域、融体の温度分布、チタン融体の流れを明らかにした。 (2)融体撹拌の検討:(1)の結果から溶解条件がチタン融体の流れには影響しないこと、撹拌は十分に行われていることが明らかになったので、本年度は融体撹拌の検討は行わなかった。 (3)水素プラズマアーク溶解(第1段プロセス)における水素濃度測定: 2018年度の主な検討課題である。まず、2017年度までは半定量方法であった水素濃度測定を定量方法に変更して、より正確なチタン融体中の水素濃度を定量できるようにした。その後、初期酸素濃度、プラズマ中の水素分圧、プラズマガス流量、溶解時間、プラズマ電流、冷却方法がチタン融体中の水素濃度に及ぼす影響を明らかにした。これらの結果を基礎として、脱酸剤として機能する融体中水素濃度を最適化(最大化)する第1段プロセス条件を確立することができた。 (4)チタンインゴット中の酸素定量分析に関する検討:EPMAを使用した方法でチタン中の酸素濃度が0.2mass%以上であれば定量分析が可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(イ)「(1)チタン融体の熱流動解析」および「(2)融体撹拌の検討」に関しては、2018年度に十分な成果が得られたと考えている。チタン融体の表面温度や融体の流れ、加えてそれらの及ぼすプラズマ溶解条件の影響が明らかになったことで、プラズマ溶解条件設定や酸素・水素分析位置に関する知見が得られた。 (ロ)「(3)水素プラズマアーク溶解(第1段プロセス)における水素濃度測定」に関しても十分な成果が得られている。初期酸素濃度と水素濃度に関しての知見は水素プラズマ溶解の可能性とともに限界に関しても示唆しており、従来報告されているチタンおよびチタン酸化物の水素プラズマ溶解を統一的に説明できるものと評価している。第2段プロセスでのチタン融体からの酸素除去は物質収支に支配されるので、第1段プロセスで十分な水素をチタン融体中に導入することが必要である。チタン融体中の水素濃度と水素プラズマ溶解条件の関係を調査したことで、初期酸素濃度が一定の条件下ではプラズマガス中の水素分圧がチタン融体中の水素濃度に最も大きな影響を及ぼすことを明らかにした。これらの知見により次年度以降の第1段プロセス条件を設定することができた。 (ハ)挑戦的なテーマでありながら、論文をMetallurgical and Materials Transactions Bに投稿し受理された。1年目にして大きな成果をあげることができた。 (ニ)従来の酸素分析は不活性ガス融解-赤外吸収法を用いていたが、広い領域を分析するのは膨大な時間と手間が必要で現実的に不可能であった。EPMA分析直前に表面処理を行うことで、酸素濃度の下限値に限度はあるもののEPMAを基礎とした分析手法を確立できたことは大きな進捗である。 以上より、当初の計画に加えて(ハ)および(ニ)の進捗があったことから当初の計画以上の進展と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は最終年度であり、当初目的に設定した「(4)アルゴンプラズマアーク溶解(第2段プロセス)における脱酸レベルの把握」および「(5) 酸素除去機構および最適プロセスの提案」に注力する。 「(4)アルゴンプラズマアーク溶解(第2段プロセス)における脱酸レベルの把握」に関しては、2018年度に確立した最適第1段プロセス条件を使用した「水素プラズマアーク溶解とそれに続くアルゴンプラズマアーク溶解からなる二段階法」を用いた酸素除去を検討する。第2段プロセスの溶解時間、プラズマガス流量、プラズマ出力、プラズマトーチ-融体表面間距離などの溶解パラメータが脱酸レベルに及ぼす影響を検討する。加えて、初期酸素濃度が脱酸レベルに及ぼす影響を明らかにする。チタン融体表層域の酸素濃度の低下に着目するのは当然であるが、融体中の酸素濃度分布も把握しながら研究を進める。それらを通して、脱酸レベルのみではなく脱酸領域までを考慮したプロセス設計を行いたいと考えている。 最終的な目的として設定した「(5) 酸素除去機構および最適プロセスの提案」に関しては(イ)酸素除去の熱力学的考察は現在も進めており、極めて新規性の高い脱酸原理を提案することになるので脱酸機能の図的表現方法まで含めて検討する、(ロ)300 mass ppmの脱酸レベルを可能とするプロセス条件を提案する。加えて、産業界との連絡を密にしながら工業的に必要な脱酸レベルを達成するためのプロセスも検討する。 上記データを中心とした論文の投稿や学会発表などの活動に加えて知財化も積極的に推進する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたチタン融体シミュレーションを外注する予定であったが、研究グループ内で行うことができたため。加えて、シミュレーション結果から2018年度は融体の撹拌に関する検討を行う必要がないことが判明したため。
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Research Products
(2 results)