2019 Fiscal Year Annual Research Report
Formulation of a comprehensive solid-solution-strengthening theory accounting for short-range-order softening
Project/Area Number |
18K18936
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡本 範彦 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60505692)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 固溶体合金 / 固溶強化 / 固溶軟化 / 原子変位 / 短範囲規則 / 局所格子ひずみ / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
構成元素数が多く溶媒と溶質の区別ができない等原子量の高エントロピー合金において,全構成元素の理想格子位置からの平均原子変位量と極低温域での降伏強度との間に強い正の相関があることを最近研究代表者らは示している.このことは,平均原子変位量を第一原理等により算出しさえすれば,元素数や濃度に依らず固溶体の強度を予測することが可能であることを示している.しかし,2元系固溶体の一部において,従来考えられてきた短範囲規則化による強化とは逆の軟化が生じていることを示唆する結果が得られた.これは,短範囲規則化している領域の原子変位量がマトリックス部分(完全ランダム配列に近い領域)のそれと異なるためだと考えられる.本研究では,どのような短範囲規則が強度を支配するかを明らかにし,希薄合金にしか適用できなかった従来固溶強化理論を代替する,溶質濃度や元素数に制約されず,かつ短範囲規則性を包含した固溶強化理論の構築を目指した.過去に極低温での臨界分解応力剪断応力(CRSS)の溶質濃度依存性が報告されている複数の二元系固溶体合金について,最近接原子間の短範囲規則性のみ考慮したスーパーセル構造を構築し,VASPコードにより構造緩和し平均原子変位を得た.その結果,短範囲規則度が増加(異種原子が優勢)するに従い平均原子変位が増加することがわかった.CRSS-原子変位量のマスター直線が正に偏移するCu-Zn系固溶体合金では,短範囲規則化に起因する原子変位量変化により強度変化を説明できる一方,負に偏移するCu-Al系固溶体合金では,そのような説明が不可能であった.これらより,最近接の二体相互作用だけでなく,より長範囲の相互作用・規則度が原子変位量に影響を与えている可能性が示唆された.
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