2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of solid catalysts for direct synthesis of unsaturated sugar derivatives from sugars without protecting groups
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18K18965
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田村 正純 東北大学, 工学研究科, 助教 (10635551)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 触媒・化学プロセス / メチルグリコシド / ジデオキシ糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖類の選択的変換には、一般的には水酸基の保護、脱保護が必要となるため、多段階合成による収率低下、保護基による反応性低下、保護基由来の多量の廃棄物生成といった問題を抱える。従って、水酸基を保護しないで、選択的な変換を可能にする触媒の開発が望まれ、特に、回収、再利用容易な固体触媒が望ましい。しかし、糖類の水酸基の反応性の類似性から、無保護での選択的変換は非常に難しい。糖誘導体の中で、不飽和糖類は様々な有用医薬品合成のキー中間体である。従来法では多段階合成を必要とするため、無保護糖からの一段合成が望まれるが、そのような報告例はない。そこで本研究では、糖類が有する水酸基のシス、トランス構造に着目し、これらの構造の違いにより隣接ジオール基を選択的に認識・活性化し、脱酸素脱水反応により同時除去することで、無保護の糖類を不飽和糖類に変換可能な固体触媒の開発を目指した。 隣接ジオール基の脱酸素脱水反応に有効なReOx-Au/CeO2をベース触媒とし、メチル α-D-マンノピラノシドからのcis隣接ジオールの脱酸素脱水(DODH)反応によるメチル 2,3-ジデオキシ-α-D-マンノピラノシド合成をモデル反応として用い、触媒調製方法、金属担持量、水素圧、反応温度、担体の影響について詳細に検討した。その結果、酸化セリウムが担体として最適であり、沈殿法を用いてAuを担持させた触媒が有効であり、Re担持量1 wt%、Au/Re=0.3の組成のReOx-dpAu0.3/CeO2が最適触媒であるとした。低水素圧(1.2 MPa以下)でも反応は円滑に進行し、413 K、水素圧1.7 MPaの条件で、目的のジデオキシ糖を90%の収率で合成できることを明らかにした。また、他のメチルグリコシドにも適用可能であることも示した。本研究成果はACS Catal. 2019, 9, 3725に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メチルグリコシドをモデル基質としたDODH反応において、触媒最適化検討を行い、ReOx-Au/CeO2が有効であり、その組成(金属担持量、Au/Re組成)や調製方法の最適化もできている。また、ReOx-Au/CeO2触媒を用い、各種立体構造の異なるメチルグリコシドを基質とした反応を行うことで、本触媒ではメチルグリコシドのジオールの立体構造(cis, trans)を認識して反応が進行していることを見出し、メチルグリコシドのcis隣接ジオール選択的に脱酸素脱水(DODH)反応が進行することを明らかにした。また、本触媒は不均一系触媒として機能し、再利用可能な耐久性の高い触媒であることも確認できている。通常、ジデオキシ糖は熱的に非常に不安定であるが、詳細な条件検討(反応温度、水素圧、濃度依存生など)に基づき、比較的高活性かつ高収率で目的ジデオキシ糖を合成することにも成功した。またメチルグリコシドの基質適用性についての評価も行う事ができており、各種cis隣接ジオールを有するメチルグリコシドから目的ジデオキシ糖を41~90%収率で合成することに成功した。これらの結果を基に、論文(ACS Catal. 2019, 9, 3725)を出すこともできている。
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Strategy for Future Research Activity |
ReOx-Au/CeO2触媒を用いたメチルグリコシドのDODH反応において、詳細な反応メカニズム、特に、基質がどのように吸着し反応が進行しているかについてはまだ明らかにできていない。特に、六員環メチルグリコシドと五員環メチルグリコシドの反応性の違いは大きく、また、六員環メチルグリコシドにおいても、糖類のOH基やCH2OH基の立体構造によっても反応性が異なっていることが予想されている。また、五員環糖であるメチルβ-Dリボフラノシドでは、高収率でジデオキシ糖が合成できない問題もある。生成したジデオキシ糖の安定性も勘案して検討を行っていく。実験としては、各種メチルグリコシドを用いた詳細な速度論解析を行うことで、それらの違いの起源を明らかにしていく。また、計算化学的手法(DFT計算)も取り入れ、より精密な反応メカニズムを明らかにしていく。計算化学を専門とする東京大学の中山哲教授と協力しながら本研究を進めていく。さらに、生成したジデオキシ糖を加水分解や水素化することで、有用化学品(ポリオールなど)に変換する触媒プロセスに関する研究を行うと共に、アセタールを保護していない糖類(単糖や多糖類など)への適用の可能性についても検討を行っていく予定である。
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Research Products
(5 results)