2018 Fiscal Year Research-status Report
材料・プロセス・デバイスの革新による3次元肝血管組織の構築と機能発現
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18K18969
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 真澄 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30546784)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / 細胞培養 / 光架橋 / 水性2相系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,「複数種の細胞を,生きた状態で,マトリックスの内部および表面に導入できる,スポンジ状のハイドロゲル材料」を作製する手法を開発し,活用することを目的としている。初年度に当たる平成30年度は,特に,「共連続水性二相系」による多孔性ハイドロゲルの作製プロセスの確立を目指し,ゼラチンおよびPEGからなる水性2相系を利用した新しい材料開発について主に研究を推進した。光架橋性ゼラチンを合成し,2相の混合状態を精密に最適化することによって,細胞を生きたままマトリックスに導入した多孔性ハイドロゲルの作製を実証することができ,また内部に形成された細孔の連通性も確認できた。培養肝細胞を導入した実験において,スポンジ状ハイドロゲルでは,細胞の生存率,増殖能力(Ki67の免疫化学染色による評価を実施),および機能(リアルタイムPCRによる肝細胞特異的遺伝子発現の解析を実施)が,均一なハイドロゲルと比較して大幅に上昇することが確認され,新規材料としての効果が確認された。またこの他にも,アルギン酸ファイバーを犠牲材料として利用するスポンジ状ゲル材料の作製プロセス構築を目指し,主にコラーゲンを用いた実験を行った。このアプローチについても,その有用性を示すための実験を推進させている段階である。加えて,ハイドロゲルを用いた血管組織モデルの作製も同時並行で研究を進めており,ハイドロゲルの微細加工を行ういくつかの手法を提案することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった,「共連続水性2相分散系」という,ポリマーの混合水溶液が示す新しい相分離状態を利用することによって,「細胞を生きたままマトリックスに導入できる」スポンジ状のハイドロゲルの作製を実証することができた。この点において,初年度の目的を十分にクリアする成果がえられたものと考えられる。また,細胞機能評価など不十分ではあるものの,犠牲層を用いたハイドロゲルスポンジの作製手法など,いくつかの新手法についても検討を行うことができた。以上を踏まえると,概ね計画通りに研究が推進したものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の2年目に当たる平成31年度は,主にプロセスの最適化による肝機能発現の制御を目指し,得られた組織体に対して潅流培養を行うことで,「肝臓を高度に模倣した複合型肝血管組織」の作製を目指す。スポンジ状の材料であっても,能動的に培養液を供給しない場合には,内部の細胞機能の上昇が不十分であるとも考えられるため,潅流チャンバーの設計と作製を行ったうえで,潅流培養系の構築を行い,特に肝細胞に対する機能向上効果があるかどうかについて評価を行う予定である。ゲルのサイズと形状,入口での酸素分圧,細胞密度,などのパラメーターを制御することで,肝細胞の機能及び生存を維持できる条件を見出す。この検討においては,当面は培養肝細胞を用いる予定であるが,初代肝細胞の利用やまた,光架橋性ゼラチン以外にも,より細胞活性の高いコラーゲンや,毛細血管の組織化において頻用されるフィブリンなどからなるスポンジ状のハイドロゲル作製を目指し,新しい材料作製プロセスにチャレンジする予定である。また当初の目的であった,マトリックスの内外における細胞の共培養系の開発についても,引き続き実施予定である。
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