2019 Fiscal Year Research-status Report
材料・プロセス・デバイスの革新による3次元肝血管組織の構築と機能発現
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18K18969
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 真澄 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30546784)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 生体組織工学 / 肝細胞 / ハイドロゲル / 共培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,「複数種の細胞を,生きた状態で,マトリックスの内部および表面に導入できる,スポンジ状のハイドロゲル材料」を作製する手法を開発し,特に創薬や再生医療への応用を目指して研究を進めている。本研究の2年度目にあたる2019年度は,初年度に開発した「共連続水性二相系」を利用する多孔性ハイドロゲルの作製プロセスを,肝細胞の潅流培養および共培養系に適用した。潅流培養においては,フィードの培地供給流量を制御しながら酸素分圧のモニタリングを行ったところ,流量調節によって特に下流域における酸素分圧を制御できること,また,低酸素条件において発現量が上昇する遺伝子が存在すること,などの知見が得られた。また共培養系においては,単純に肝細胞と繊維芽細胞を混合した培養系の優位性を確認することができた。さらに,共連続水性二相系を用いる手法以外にも,アルギン酸ハイドロゲルからなる微小なファイバーを犠牲材料として利用する手法や,マイクロ流路内に細胞を内包した微小なコラーゲンのパターンを簡便に形成する手法の開発も行った。特に,バルクスケールでのプロセスを用いながらも,マイクロメートルサイズのアルギン酸ファイバーを作製する手法を確立し,得られたファイバーを光架橋性ゼラチンおよびフィブリンからなるハイドロゲル材料にそれぞれ導入し,ファイバーを溶解することで,連通孔を内部に形成できることを確認した。さらにこれらの材料に対して血管内皮細胞を導入したところ,細胞が内腔となるゲル表面に接着している様子が観察された。このような手法によって得られた組織体は,特に創薬支援ツールとしての応用が見込まれるため,現在はより高密度な細胞の導入を行い,細胞機能の向上を図ったうえで,薬剤アッセイへの適用を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的の一つであった,「プロセスの最適化」による肝機能発現の制御を実証するため,スポンジ状のハイドロゲルからなる組織体に対して潅流培養を行うことで,細胞機能の発現制御に関する可能性を実証できた。特に,低酸素条件において発現量が増加する遺伝子が存在することを3次元培養環境において確認できたことは,通常の静置培養,あるいは懸濁培養と比較した際の「流体デバイス・システム」の有用性を示す結果であったと考えられる。さらに,光架橋性ゼラチンやフィブリンからなるハイドロゲル材料に対して血管内皮細胞を導入することで,毛細血管網を導入した複合型肝血管組織の作製に関する道筋を示すことができた。以上の結果より,当初の目的とする進捗を概ね達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年に当たる2020年度は,引き続き肝臓の形態および機能をより高度に模倣した組織の再現を目指しながら,実際の薬物アッセイにおける有用性の実証を行う。まず,血管網の形成については,これまでに検討を行ってきた光架橋性ゼラチン,コラーゲン,およびフィブリンの各種材料についてそれぞれ細胞接着とネットワーク・管腔形成において最適な条件を見出す。特に血管内皮細部の接着を促すフィブリンをベースとして,複数種の材料を混合したコンポジットハイドロゲルの利用を検討したい。そしてまた,共培養によって肝細胞の機能が向上するかどうか,特に薬物代謝遺伝子の発現を指標とした検討を行う。さらに,潅流培養を実証し,流量および酸素分圧などの環境要因が細胞の増殖性や機能に与える影響について詳細に評価を行うことで,in vitroにおける培養システムとして「肝臓を高度に模倣した3次元培養系」の有用性を実証したい。さらに,研究の進捗によっては,薬物の代謝応答試験を行う予定である。当面はモデル化合物を添加した上で,細胞の薬剤代謝挙動を検証し,特にorgans-on-a-chipシステムにおける肝臓ユニットとしての応用可能性を評価する。研究が順調に進捗した場合には,肝臓によって代謝されることで機能を発現するプロドラッグの薬効評価などへの適用を目指す。
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