2018 Fiscal Year Research-status Report
酸素透過性マイクロデバイスを用いた毛包組織の形態形成メカニズムの解析
Project/Area Number |
18K18971
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
福田 淳二 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (80431675)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 脱毛症 / 毛包 / 毛包原基 / 上皮系細胞 / 間葉系細胞 / スフェロイド / マイクロデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、独自に見出した毛包原基形成モデルを用いて、毛包の形態形成メカニズムを解明するとともに、育毛剤評価ツールとして当該モデルが利用できることを示すことを目的としている。我々は、独自の培養デバイスで毛包形成に関わる上皮系および間葉系細胞を培養すると、培養3日間で毛包原基が形成され、これをマウスに移植すると毛包形成および発毛がみられることを報告してきた。一方、これを移植せずさらに長期的に培養を継続したところ、培養7日目頃から生体外培養系であるにも関わらず毛幹様構造が伸長してくることを報告した。ただし、これまで生体外培養で毛幹様構造が形成されるのは、300個の毛包原基のうち1つ程度であり、かなり効率が低いことが分かっていた。そこで、本研究では、この効率を向上するために培養液や細胞外マトリックスの添加など、培養条件を最適化した。その結果、90%以上の効率で毛幹様構造を伸長させることが可能な条件を見出した。また、毛包原基から毛幹様構造が伸長してくる様子をタイムラプス撮影することに成功し、形態学的に毛幹が形成されるプロセスを明らかにした。さらに、2種類の細胞のそれぞれの凝集体形成およびそれに伴う同種、異種細胞間の相互作用が毛幹様構造の形成に重要であることが分かったことから、2種類の細胞の播種のタイミングなど毛包原基の作製手順の工夫によって、1つの毛包原基から形成される毛幹の本数と長さをある程度制御することが可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
蛍光ラベルした2種類の細胞の毛包原基形成プロセスを可視化することができた。これにより毛包原基およびその後の毛幹様構造の伸長がどのように生じてくるのか、形態学的な評価のみではあるものの可能となった。また、ハーグ治療に用いられる発毛促進因子を培養液に添加することで、添加しない場合と比較して、発毛効率および要する時間が改善することが分かり、発毛剤の評価ツールとして利用できる可能性が示すことができた。さらに、培養条件の最適化により、発毛効率が90%を超える条件が見出されたことから、発毛剤のみならず再生医療に利用することも可能と考えられ、当初の予定を超える成果が得られていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
培養条件の最適化において、細胞外マトリックスのミックスを利用したが、その中の土の成分が有効であるのか明らかにし、最低限の要件を見出す必要がある。また、この培養系を利用して、発毛剤として有効性が知られている複数の成分を用いて検討を行い、薬剤選別のツールとして利用可能かどうか評価する。特に、伸長速度などの単純な観察のみによって連続的に評価することが可能かどうか確認する。また、メカニズムについては、毛幹様構造の形成過程のサンプルにおいて、様々な組織染色を実施し、生体の毛包組織との比較を行うことで、生体外培養系である本培養においてどの程度生体に近い構造物を形成しているのか評価する。成果発表としては、特許出願を済ませた上で、英語論文として発表する。
|
Causes of Carryover |
分析試薬(組織染色などに使用する抗体など)が複数回使用できたことから、消耗品の経費を節約することができたため。
|