2018 Fiscal Year Research-status Report
中赤外グラフェンプラズモンの波数ベクトルのアップコンバージョン高空間分解能計測
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18K18992
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 嘉人 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50533733)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | グラフェン / 光圧 / 光トラッピング / 中赤外 |
Outline of Annual Research Achievements |
単原子層グラフェンで生じる伝搬表面プラズモンは、貴金属プラズモンと異なりプラズマ周波数が中赤外にある等の様々な特徴があり近年注目されている。特に、ナノデバイスへの応用に向けて、ナノ空間でグラフェンプラズモンを光励起し、その伝搬方向を制御する研究が活発に行われてきた。しかし、グラフェンプラズモンの従来研究の多くは理論のみによるもので、実験検証がほとんどされていない。本研究は、グラフェンプラズモンが貴金属プラズモンよりも極めて大きい波数を持つことに着目し、伝搬する表面プラズモンの運動量に基づく放射圧ベクトルをナノ粒子の光圧ポテンシャル解析法により測定することで、グラフェンプラズモンの波数ベクトルを高い空間分解能でイメージングする方法を世界に先駆けて開発するというものである。 本年度は、中赤外域の光圧を可視・近赤外域の光で測定するために、可視・近赤外域から中赤外域にわたる幅広い領域で透明なシステムを新たに開発した。捕捉粒子にはZnOナノ粒子、粒子の分散液にはジメチルスルホキシド(DMSO)、溶液セル用の基板にはCaF2を用いた。グラフェンプラズモン励起用としては、波長4.8μmの中赤外レーザーを導入し、ナノ粒子の捕捉光や、粒子の位置揺らぎ検出光には、グラフェンプラズモンを励起しない可視・近赤外域の光を用いた。DMSO中のナノ粒子をチタンサファイアレーザーで捕捉し、粒子の位置揺らぎから捕捉ポテンシャルを計測することに成功した。さらに中赤外レーザー光を斜め方向から粒子に照射することによって伴うポテンシャル変化から、中赤外域の光圧を初めて測定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画したとおり、可視・近赤外域から中赤外域にわたる幅広い領域で透明な光学システムを開発し、ZnOナノ粒子の光捕捉、その位置揺らぎから捕捉ポテンシャルを測定することに成功した。本年度に目標とした、中赤外レーザー光照射の有り無しでポテンシャル解析を行い、その違いから中赤外域の光圧を可視・近赤外光で測定できることを示せたことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
グラフェンプラズモンにおける波数ベクトルの空間分解イメージングを実現する。グラフェン歪みナノ構造は、実績のあるグラフェンと基板の熱膨張率の違いを利用した方法で作製する。プラズモン励起光の強度と偏光をパラメーターに、捕捉レーザー集光位置を変えながらポテンシャル解析を行い、グラフェンプラズモンの波数ベクトルを高空間分解イメージングする。また、私が得意とする電子線ビームリソグラフィ法により作製したCaF2微細構造上にグラフェンを貼り付け、歪みナノ構造を制御して作製する。このサンプルに対しても同様の波数ベクトルイメージングを行い、我々がシミュレーションで見出してきた、制御されたグラフェン歪みナノ構造による表面プラズモンの伝搬方向制御を実証する。
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Causes of Carryover |
平成30年度11月、開発中の光計測制御システムの開発点評価を行う過程で、当初の予測に反し、照射系の不安定性のため、サンプルの位置揺らぎ情報の精密計測を行うには不十分であると判断し、光学システムの再検討・安全性向上を行う必要が生じた。そこで、安定な光学定盤と安定化ピエゾミラーに使用することを計画している。
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