2018 Fiscal Year Research-status Report
垂直配向カーボンナノチューブ膜を用いた1次元ナノ空間における物質輸送機構の解明
Project/Area Number |
18K18994
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 英俊 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (40345393)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 靖彦 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (50314084)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 一次元ナノ空間 / 水輸送チャネル / 分離膜 / カーボンナノチューブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、垂直配向カーボンナノチューブ(CNT)/高分子複合膜を用いて、CNT内の水透過挙動に与える温度とCNT長の影響を詳細に調査することによって、CNT内部空間における水輸送メカニズムの解明に挑戦することである。 本年度は、CNT内における水透過挙動の特徴を明らかにするためにCNT内の透水性の温度依存性と水存在状態の関係を調べた。先ず、化学気相成長(CVD)法とフッ素系高分子の気相蒸着重合を用いて、反応試薬と反応条件を詳細に検討することによって化学的安定性に優れた垂直配向CNTアレイ/高分子複合膜を作製することに成功した。得られた複合膜について全量濾過方式のセルを用いて、圧力差0.1 MPa、測定温度=15~45℃の条件下で水および有機溶媒の透過流束を測定した。水は26℃以下では膜を透過せず、透水挙動の温度依存性は36℃付近で活性化エネルギーが変化する挙動を示した。一方比較のために実施した有機溶媒の透過実験では、このような温度依存性は観察されなかった。さらに透水実験後の膜について行った示差走査熱量分析測定から、36℃付近で水の融解ピークが観察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
垂直配向CNT膜の作製と評価については概ね計画通りに進捗している。本年度は、CVD法とフッ素系高分子の気相蒸着重合を用いて化学的安定性に優れた垂直配向CNTアレイ/高分子複合膜を作製し、15℃から45℃までの温度域における圧力勾配下でのCNT内における水輸送現象の特徴をはじめて明らかにした。この成果は既に炭素材料分野では国際的に評価の高いCarbon誌に掲載されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、分光学的な手法を用いてCNT内の水の構造をより精密に評価し、透水実験の結果と関係づける。さらにCNT長の異なる膜を用いて透水量のチャネル長依存性を明らかにし、種々の流体力学モデルに基づいた解析を行うことで、最終的にCNT内における水輸送現象を包括的に説明できる数式の提案を目指す。
|
Causes of Carryover |
(理由) 購入を予定していた消耗品の納期が年度内に間に合わなかったため。 (使用計画) 製膜に必要な試薬の購入および製膜に使用する装置の消耗品費を予定している。また、次年度は研究成果の学会発表のための海外旅費、海外の主要ジャーナルへの論文投稿のための論文英文校閲費を予定している。
|