2019 Fiscal Year Research-status Report
Preparation and functionality of 3D graphene nanoribbon based on propeller-shaped pi-conjugated systems
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18K19004
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久保 孝史 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60324745)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | グラフェンナノリボン / 炭素材料 / プロペラン / 三次元GNR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではグラフェンナノリボン(GNR)等に代表される二次元炭素材料に対して、新たな次元性の導入、すなわち三次元GNRと呼べる新たな炭素材料の創出を行い、その効率的合成法の確立と機能開拓に挑戦することを目的としている。これまでに報告されているGNRの合成法では、その前駆体にいずれも平面構造を持ったπ共役系分子が使用されているのに対し、本研究では三次元GNRの構築方法として非平面型π共役系分子を用いることを提案する。 2019年度は、2018度に達成したプロペラ型芳香族化合物の三次元GNRの効率的合成の成果を、さらに発展させることを行った。作成したGNRのブロモ原子を高分解能原子力間顕微鏡の探針を用いて引き抜きビラジカル種を発生させ、このビラジカル種にC60を探針を用いて接近させた。すると、C60は速やかに反応し、三次元GNRに対して位置選択的にC60を導入することに成功した。ビラジカル種は反応性が非常に高いことが予想されることから、今後は他の化学種との反応も試み、自由自在なGNRの化学修飾の技術を確立することを目指す。なお、この研究成果は、Science Advances誌上で報告している(DOI: 10.1126/sciadv.aay8913)。 また、異なる構造をもつ三次元GNRの合成を行うべく、モノマーユニットの新規設計・合成にも挑戦した。湾曲した分子やブロモ以外の置換基を導入した分子など、さまざまな検討を行ったが、今のところ効率よくGNRが合成できる条件は見つかっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三次元GNRを基板上で合成(on-surface synthesis)するには、適切なモノマーユニットを設計し、基板上での重合反応に適用する必要がある。2018年度にはプロペラ型のブロモ置換誘導体が基板上で効率よく重合化することを見出し、三次元GNRのプラットホームとなる構造体の合成に成功した。さらに2019年度には、基板垂直方向に化学修飾することに成功した。具体的には、垂直方向に張り出したブロモ原子をAFM探針で取り除き、発生したジラジカル種に対してC60を結合させることができた。これはGNRの三次元化という点で画期的な成果であり、当初の計画が順調に進んでいると考えている。研究成果はすでに、世界的に著名な雑誌にオリジナル論文の形で報告済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
三次元GNRの化学修飾は、C60分子を1つ結合させるにとどまっている。今後は、複数のC60分子をGNR上に結合させることを試み、C60分子の間に働く相互作用について調査を行う予定である。また、C60以外の機能性分子についても結合させることを試みる。これらの試みにより、三次元GNRの多機能化へと研究を発展させていく。 三次元GNRの他のプラットホーム形成にも着手する。現在は一軸方向に成長するGNRを用いているが、基板表面上で二次元的に成長するGNRを与えるモノマーの設計・合成にも挑む。
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Causes of Carryover |
2020年3月に行われる予定であった日本化学会第100春季年会に教員ならびに学生が出席するための旅費として43万円ほど予算確保していたが、新型コロナウイルスの影響で年会開催が急遽中止となったため、使用できなくなった。2021年3月に第101春季年会が行われる予定であることから、旅費として使用する。
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