2019 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of bactericidal effect using controllable nanostructures
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18K19008
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
伊藤 健 関西大学, システム理工学部, 教授 (50426350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小嶋 寛明 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 上席研究員 (00359077)
新宮原 正三 関西大学, システム理工学部, 教授 (10231367)
清水 智弘 関西大学, システム理工学部, 准教授 (80581165)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 濡れ性 / ナノ構造 / 微生物付着 / 抗菌 / 殺菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、セミの翅にある規則的ナノ構造が微生物に対して殺菌・抗菌性を示すことに着目し、人工的なナノ構造を作製し、そのナノ構造の特徴による殺菌・抗菌性を評価してきた。ナノ構造による殺菌・抗菌作用は微生物との相互作用により生じるため、その表面に微生物が付着しないと効果が出ない。そこで、ナノ構造表面のどのような物理化学的条件が微生物の付着に影響を及ぼすかを評価した。具体的には、ナノ構造表面の濡れ性を変化させ、濡れ性(接触角)に対する大腸菌の付着数をカウントした。その結果、接触角が増加するにつれて付着数が増加することがわかった。また、同じ接触角でもナノ構造がある表面にはほぼ2倍の大腸菌が付着することが分かった。つづいて、微生物の運動性がナノ構造表面への付着に及ぼす影響を評価した。大腸菌のワイルドタイプ(WT)の他、遺伝子欠損株(鞭毛欠損による運動性のない株、鞭毛はあるが運動性が無い株)を利用し、ナノ構造表面の濡れ性と付着数の関係を調査した。その結果、WTでは先述と同様に接触角の増加に伴い、付着数が増加した。一方、運動性のない2つの株の菌は、親水性表面に対して付着数の増加が見られた。この結果は、鞭毛の運動性に関連していることを示唆している。つまり、鞭毛は疎水的であるため鞭毛を使って運動する菌の場合は、疎水性表面に付着しやすい。一方、微生物の体表は親水的であるため運動性のない菌は親水相互作用により親水性表面に付着しやすいと考えられる。この結果は、ナノ構造表面の濡れ性と微生物の運動性が殺菌・抗菌効果と関連があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工的なナノ構造を利用することで、表面の濡れ性を変化させ、その濡れ性と殺菌・抗菌効果の関係を明らかにしたのは世界的にみても初めてのことである。また、構造側だけでなく微生物側の特徴も殺菌・抗菌効果に影響を与えることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ構造表面が殺菌・抗菌作用を発現する理由については未だに謎のままである。最終年度は、表面に敏感なセンサ技術(水晶振動子マイクロバランス法や電気化学インピーダンス法)を利用し、殺菌・抗菌作用のきっかけとなる現象を見出したい。
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Causes of Carryover |
前々年度からの繰越金が多かったため、今年度への予算繰り越しが若干生じたが、ほぼ予定の研究費を使用している。今年度は、ナノ構造を持つセンサの形成などの消耗品として利用する予定である。
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Research Products
(9 results)