2018 Fiscal Year Research-status Report
走査トンネル顕微鏡を用いた圧縮センシングによるマグノン分散関係計測
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18K19013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 幸雄 東京大学, 物性研究所, 教授 (80252493)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / マグノン / 非弾性トンネリング / 圧縮センシング |
Outline of Annual Research Achievements |
スパイラルスピン構造を示すMn/W(110)磁性薄膜上において、スピン分極した非弾性トンネル過程により、同薄膜中のマグノンに由来すると思われる信号を検出することに成功した。スピン方向を反転させることによる信号強度がスピン励起と考えることでうまく説明できることから、マグノン励起によるものと結論している。しかもその信号強度の面内分布測定から、散乱体近傍における定在波を観測しており、その波数測定からマグノンのエネルギー分散測定が走査トンネル顕微鏡(STM)により局所的に観測できる可能性を示すことができた。これまでのSTMでは、電子状態の定在波観測により局所領域における電子状態の分散関係が観測され、物質科学の発展に大いに貢献してきたが、今回の研究で、励起プロセスであるマグノンやフォノンの分散関係測定にも展開される可能性が示唆され、更なる展開が期待される。 さらに観測されたマグノン波数から、その定在波生成にはマグノンのカイラリティが関与していることが明らかとなった。マグノンのカイラリティは、同薄膜のスピンスパイラル構造や基板由来のジャロシンスキー・守谷相互作用を反映したものであり、これらがマグノンにおいても、重要な役割を担っている可能性を示すことができた。 今後、実験結果の解釈を更に推進させ、その成果を公開していく。さらには、測定方法にも工夫を凝らすことによって、測定の迅速化・高効率化を実現し、局所マグノン分散計測手法として確立させていく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
得られた実験結果の解析にしばらくの時間を要したが、年度末にかけて国内外の研究者との共同研究を通じて、その解釈を大いに進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、実験結果の解釈を更に推進させ、その成果を公開していく。さらには、測定方法にも工夫を凝らすことによって、測定の迅速化・高効率化を実現していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、実験装置の使用状況のタイミングを計り適宜装置の改良を進める計画であったが、測定の都合上継続して測定を続けたほうが良いと判断し、改良を次年度に廻すこととした。このため装置改良等に係る費用に関しては次年度に使用することとなった。
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Research Products
(10 results)