2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of in situ Real Space Obserbation Method of Spin Transport
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18K19014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保原 麗 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (30568176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白木 一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10399389)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | スピン / SPM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は伝導電子のスピン偏極度の、平衡状態からのずれであるスピン圧を、「局所的」かつ「電気的」に簡便に測定できる、メカニカルなプローブを開発することが目的である。そのためにはスピン圧と電圧を変換するための機構をプローブ先端の微細なスペースに作りこむことが必要であり、その原理、構造や材質を選定する必要があり、これが研究の要となる。 スピン圧と電気的信号の変換には、磁性体および非磁性体へスピン注入した際の電位差を利用することとし、昨年度に引き続き特性のシミュレーションや設計、また微細加工を用いた制作を行った。 現在、解決すべき課題は二つあり、一つは電荷電流の影響である。磁性体と非磁性体の距離をできるだけ小さくしたうえで、複数のプローブから補完を行う手法を昨年度から検討している。本年度は特にこの構造で製作するにあたっての技術的課題に取り組んできた。電極を一つ増やす毎に1つ高次の補完ができるが、プローブの空間解像度が犠牲になり、また試料の不均一性などの影響を受けやすくなる。 もう一つの課題は上記の複数の電極を一つのプローブに作りこみ、同時に試料に接触させる際の信頼性である。微細加工の仕上がり、プローブ取り付けの角度などの要因で試料に電極が接触しないことがあり、スピン圧の測定に困難が生じている。プローブ間隔、補完の量、微細加工の技術的難易度の三者を考慮し、どの組み合わせが現実的に最良かを検討・試作・解析を行っている。 また、山梨大学において、多探針STMに冷却機構・プローブマウンタ・磁場印加型サンプルステージの制作が完了し、本研究で制作するスピン圧プローブを搭載できるようになった。東大における装置と合わせ、2台の装置でプローブの実証ができる体制となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の進捗は順調ではあったが、昨年度の遅れを解消するには至っていない。 多数のアイデアを検討したために出た遅れがプローブの構造について多数のアイデアを検討したが、新奇なデバイスのため、設計や加工の様々なプロセスを検討するのに予定より時間がかかってしまった。 特に多数の電極を一つのプローブとして同時に接触する手法に問題があり、プローブの可用性を低くしているため、その部分の検討に時間を消費しているが、実際に利用するためには必要なプロセスだと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の試作プローブを製作が概ね完了しているので、今後はこのプローブを用いてスピン圧検出の実証にとりかかる。スピン圧の生成には、過去に制作した純スピン圧生成プローブを用い、電荷電圧とスピン圧の独立した、同時計測が可能かどうかを中心に、性能の検証を行う。また、必要ならば随時再設計・再制作を行う。 山梨大学において装置の改造が完了し、プローブを搭載できるようになったため、プローブの検証には、山梨大学および東京大学の多探針STMを用いる。グラフェンおよびトポロジカル絶縁体の表面においてスピン輸送特性の計測を行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
昨年度(2018年度)に計画が遅延したため、プローブ実証にかかる費用等を順延した。
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