2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of in situ Real Space Obserbation Method of Spin Transport
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18K19014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保原 麗 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (30568176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白木 一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10399389)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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Keywords | スピン / プローブ / SPM |
Outline of Annual Research Achievements |
スピン圧とは、上向き電子の化学ポテンシャルと下向き電子の化学ポテンシャルの差のことを言うが、本研究はスピン圧を「局所的」かつ「電気的」に簡便に測定できる、メカニカルなプローブを開発することを目的としている。そのためにはスピン圧と電圧を変換するための機構をプローブ先端の微細なスペースに作りこむことが必要であるが、その原理に磁性体・非磁性体界面のスピン圧生成メカニズムを利用することを考えており、その構造や材質の選定が研究の要となっている。 微細加工施設の使用可能時間が限られており、開発は遅れていたが、課題期間の延長により、プローブの経年変化を検討することができた。プローブにはスピン圧を測定するための異種金属接触が存在し、湿度と酸素濃度に敏感に反応するが、劣化の程度はプロセス各工程での洗浄プロセスの差によることがわかった。 また、スピンの計測・注入効率がプローブ間で大きく異なる問題が従来から存在し、プローブ実用への大きな妨げとなっていたが、これはプローブ先端の実効的な接触面積によるもので、表面に保護層を用いることで改善が期待できることが判明した。保護層は、酸化されず、スピン拡散に優れ、キャリアが多く、摩耗の少ない物質である必要がある。 炭素原子からなる層状物質であるグラフェンはスピンの拡散に優れ、安定した物質で摩耗に強い。特にスピン拡散長は通常の金属よりも10倍~100倍程度長く、スピン圧測定の配線として用いることで大幅な能力の向上が期待できる。このグラフェンを用いることができないか、プロセス設計を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も微細加工施設の利用に制限があり、進捗は芳しくなかったが、当初の予定にはなかったプローブの経年変化を検証することができた。これによりプロセスの問題点を洗い出すことができた。 また、スピン注入・検出効率や、経時劣化はグラフェンを用いることで解決できる可能性に思い至り、プロセス設計をやりなおしている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、スピンの検出効率、注入効率はプローブ先端の接触状況(面積・劣化状況)によることが判明し、その制御が重要であることがわかったが、銅など金属を用いた接触では摩耗に弱く、スピン拡散長が短いため、特にスピン圧検出は困難であることが判明したため、これらの問題を解決するために、グラフェンを用いたプローブ作成を検討する。 グラフェンはスピン拡散長が長く、丈夫で摩耗に強く、非磁性な物質で、スピンプローブの材料として有望であるが、他の物質のようにスパッタやMBEでの製膜はできない。転写、SiCの熱分解、CVDの3つほど方法があるが、安定して高品質な膜を生成できるSiCの熱分解法による成長法はすでに経験があるため、この方法をもちいてスピンプローブの作成を目指す。 特に、グラフェンのエッチング、グラフェン上への製膜はその性質上困難であるため、この部分を重点的に研究していきたい。
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Causes of Carryover |
本研究課題は微細加工施設の利用が必須だが、本年度はその利用がひきつづき制限されており、予定されていた利用ができなかった。 本年度利用したかった分を次年度に利用する。
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