2018 Fiscal Year Research-status Report
同位体ダイヤモンド超格子薄膜の弾道熱輸送を利用した革新的バイオセンサーの開拓
Project/Area Number |
18K19022
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
荻 博次 大阪大学, 工学研究科, 教授 (90252626)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 幸志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (50392684)
加藤 史仁 日本工業大学, 基幹工学部, 准教授 (70780170)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | ダイヤモンド薄膜 / バイオセンサー / ポンプ・プローブ計測 / フォノン輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ダイヤモンド内の高いフォノン輸送能力を利用して、単結晶ダイヤモンド薄膜に対してMEMS技術を用いた微細加工を実施し、高感度のフォノンバイオセンサー実験を行うことを目指している。12Cに対する13Cの原子混合比を、0%、25%、50%、75%、100%として制御した同位体ホモエピタキシャルダイヤモンド単結晶薄膜の成膜条件を確立し、それぞれの混合比における単層薄膜の成膜に成功した。また、ナノ薄膜に対して超高速フォノン計測を行うため、チタンサファイアフェムト秒パルスレーザーを用いた顕微鏡システムを構築し、これらのナノ薄膜内に超高周波数のコヒーレントフォノンを励起・検出することに成功した。また、熱フォノンの計測においても理論シミュレーションの構築を開始した。膜厚方向に伝播するフォノンの挙動を予測するプログラムであり、多層膜に対してフォノンの伝播挙動を計算するために、フーリエ変換を用いた手法を試みた。さらに、薄膜に対して、フェムト秒パルスレーザーを用いたポンプ・プローブ光法をもちい、膜厚方向を伝播する熱フォノンの計測を行うための光学系の構築を開始した。さらに、ダイヤモンド薄膜の自立膜作製のために、厚さ50ミクロンの単結晶ダイヤモンド基板を用いて、エピタキシャル同位体ダイヤモンド薄膜を作製し、基板をガスエッチングにより除去するプロセスの条件出しを行った。結果、厚さ2ミクロン程度の自立膜を作製し得ることを見出した。さらに、ピレン系のリンカーを導入し、薄膜表面にタンパク質を固定化する手法とその固定化条件の検証を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、同位体比を制御したホモエピタキシャルダイヤモンド薄膜の成膜およびそのフォノン特性評価を行うために、12Cに対する13Cの原子混合比を、0%、25%、50%、75%、100%として制御した同位体ホモエピタキシャルダイヤモンド単結晶薄膜の成膜条件を確立した。そして、ナノ薄膜に対して超高速フォノン計測を行うため、チタンサファイアフェムト秒パルスレーザーを用いた顕微鏡システムを構築し、これらのナノ薄膜内に超高周波数のコヒーレントフォノンを励起・検出することに成功した。その結果、意図した同位体比を有するフォノン振動が得られることを実験的に確認し、本プロジェクトにおいて見出した成膜条件により、同位体比を制御することが可能であることがわかった。また、熱フォノンの計測においても理論シミュレーションの構築を開始した。膜厚方向に熱伝導方程式を展開し、フーリエ変換法を用いることにより、フェムト秒オーダーの熱励起に対する温度応答を計算する手法を確立した。さらに、薄膜に対して、フェムト秒パルスレーザーを用いたポンプ・プローブ光法をもちい、膜厚方向を伝播する熱フォノンの計測を行うための光学系の構築を開始した。さらに、ダイヤモンド薄膜の自立膜作製のために、厚さ50ミクロンの単結晶ダイヤモンド基板を用いて、エピタキシャル同位体ダイヤモンド薄膜を作製し、基板をガスエッチングにより除去するプロセスの条件出しを行った。結果、厚さ2ミクロン程度の自立膜を作製し得ることを見出した。さらに、ピレン系のリンカーを導入し、薄膜表面にタンパク質を固定化する手法とその固定化条件の検証を行った。 以上のように、チップ作製のための材料開発、プロセス開発、解析手法、計測手法のいずれにおいても順調に開発が進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、同位体比を制御したホモエピタキシャル超格子同位体ダイヤモンド薄膜の成膜条件を確立し、欠陥の少ないセンサー素材を開発する。次に、ダイヤモンド薄膜内のフォノン輸送を計測する顕微システムを構築する。そして、薄膜表面にタンパク質を固定化し、高速フォノン輸送を用いたバイオセンサー実験を行い、その能力を評価する。この際、まずはレセプタタンパク質として黄色ブドウ球菌プロテインAを用い、また、検出モデルタンパク質として、ウサギ免疫グロブリンGを用いた実験を行う。両者の結合をフォノン輸送バイオセンサーにて評価し、その検出感度を見極める。次に、バイオマーカーとして、C反応性プロテイン(CRP)を用いる。表面に抗CRP抗体を固定化し、CRPと反応させたときの検出応答を評価する。そして、ダイヤモンド薄膜の高速フォノン輸送現象を用いたバイオセンサーの有用性と課題を明確にする。
|