2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of a noise-cancelling STM aimed at fast spectroscopic imaging
Project/Area Number |
18K19027
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
吉澤 俊介 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主任研究員 (60583276)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
走査トンネル顕微鏡( STM )は、試料表面の各点でトンネル分光測定を行い電子状態密度の空間変化を可視化する「分光イメージング」が可能なことである。しかし、測定に時間がかかるという弱点があり、ほとんど平衡状態の研究にしか用いられていない。非平衡状態をふくむダイナミクス研究に展開するためには、分光イメージングにかかる時間を短縮する必要があり、そのためには電気的ノイズや振動ノイズを格段に低減する必要がある。このうち振動ノイズに関しては、通常用いられる防振台は地面から伝わる振動を低減することはできるものの、空気や配線・配管を伝って入る音や機械振動、また、装置自身で発生する振動にはあまり効果が無い。そこで本研究計画では振動ノイズをキャンセルする新しい技術を提案し、高速分光イメージングにつなげることを目指している。 令和元年度は、振動センサの信号を増幅するための電子回路を製作し、増幅した信号を FFT アナライザで取り込んで波形解析を行った。発生源が同じ振動に対しては再現性の良い信号が得られることを確認するとともに、フィードバック制御への適切な変換方法を探るために、位相検波や多変量解析をふくむ種々の解析手法の適用を試みた。一方で、ここで検討していた手法を時間軸ではなく空間軸に対して適用することで、特徴量抽出に有用であることを見出した。この観点からの研究は、本研究計画から派生した課題として進める必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
振動センサからの信号を解析する適切な方法を探るための知見が集積している。また、ここで検討した手法が分光データの特徴量抽出に非常に有用であることがわかり、これは想定していなかった収穫である。ヘリウム液化機の更新や装置修理のために当初予定していた計画にかけられる時間が制約され、やや遅延が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
時系列データの解析結果をふまえ、トンネル信号にたたみ込まれる振動ノイズをセンサ信号に基づいてキャンセルするためのソフトウェアを製作し、実際の STM 測定への適用を目指す。 必要に応じて機械学習や制御理論からの知見の利用を検討する。回路に関してはより低ノイズの増幅器を導入する。最終的には同様の処理を FPGA ボードに実装する。
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Causes of Carryover |
所内で運用されているヘリウム液化機の更新のため、液体ヘリウムを使用できない期間が発生し、研究計画の遅延が生じた。また、実験に用いる走査トンネル顕微鏡の真空系統にリークが発生し、その修理に時間を要したため、当初予定の研究にかけられる時間が限られてしまった。これらの事由により本研究の目的をより十分に達成するためには追加の解析と実験が必要であり、そのための経費を次年度に持ち越すことで研究費をより有効に活用できると判断した。
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Research Products
(1 results)