2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K19036
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田邉 孝純 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40393805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿沼 康弘 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70407146)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 微小光共振器 / 精密加工 / 光周波数コム |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶材料からなる超高Q値微小光共振器をトップダウンで作製することで,微小光共振器の形状を精密に制御できる手法を開拓する. 本年度は,CaF2共振器を切削加工のみで作製し,切削加工の結晶方位依存性など,条件の詳細を明らかにすることで,切削加工のみで作製した共振器のQ値としては世界最高値となる10^7以上を実現した.高Q値が得られたのは,表面の凹凸を最小限にとどめることができるようになったからだと考えられる.また,切削加工後に,研磨加工を組み合わせることで,形状を大きく変化させることなくQ値10^8を超えるものを実現した. 切削加工や,研磨加工後に所望の分散が得られていることを確認するためには,精密な分散測定法を開発する必要がある.そこで,周波数確度の高い光ファイバによる光周波数コム光源を基準光とした分散測定手法を開発した.微小光共振器に透過スペクトルを測定するための波長可変レーザと,周波数マーカとしての光周波数コム光とのビート信号をモニタリングすることで,波長可変レーザの正確な波長を計測することができる.正確な波長を用いて,共振器の透過スペクトルを測定する.FSR間隔と共振器の分散にはこれまでに知られている関係式が存在するので,それを当てはめることで,共振器の分散を精密に計測することが可能となる.この手法を用いて,共振器分散を計測したところ,我々の手法を用いると,設計通りに分散が得られることが明らかになった.これは従来の結晶共振器の作製では実現困難であったことであり,結晶共振器によるマイクロコムの発展に大きく寄与するものと言える.さらに,きわめて注意深く研磨を施せば,一定の範囲内で共振器分散を大きく変えることなく研磨ができることが示され,所望の共振器分散を保ちつつ高Q値を得ることができるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
切削加工と研磨工程を組み合わせて,所望の形状,つまり所望の分散の共振器を作製する手法の開発に一定のめどをつけ,さらに既存の光周波数コム光源を周波数マーカとして用いて分散を精密に測定するための手法を開発した.これまでにQ値10^8を超える共振器が得られているので,当初目標として高Q値と分散制御の両方の目標を達成しつつある. 研究の過程において,断面形状がより鋭いものに関しては,研磨加工を極力併用しない方が良いことと,MgF2材料を用いることが光周波数コム発生においては重要であることが明らかとなってきたので,MgF2共振器で研磨加工を一切使わずに,光コム発生に十分なQ値となる10^8を目指す課題が新たに発生した. 以上を総合して,当初目的をクリアしつつありながらも,新たな研究課題に取り組む必要性が出てきたので,おおむね順調に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は光周波数コムの発生に適したMgF2共振器を切削加工のみで作製しQ値10^8以上達成することを目標とする.また,切削加工の最大の特徴である,同じ共振器を複数作製できるかどうかについても明らかとする.同一共振器を複数作製することは,産業上重要であるばかりでなく,そこから発展し,わずかに異なるFSRを有する微小光共振器を作製できれば,2つの共振器でわずかに繰り返しの異なるパルス列が得られることを意味する.それは,デュアルコム技術の開発に結び付くことが期待される.つまり同じ性能を有する共振器の作製に取り組み,その作製誤差について明らかにしたうえで,デュアルコム発生に適した,わずかにFSRの異なる微小光共振器の作製に取り組む.さらに作製した共振器を用いた光周波数コムを発生し,ソリトンパルス発生を実現させる.
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Research Products
(13 results)