2018 Fiscal Year Research-status Report
メタマテリアル完全光吸収体の構造最適化と高効率放熱デバイスへの応用
Project/Area Number |
18K19038
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 拓男 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (40283733)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹澤 晃弘 広島大学, 工学研究科, 准教授 (10452608)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | メタマテリアル / 光吸収 / トポロジー最適化 / 有限要素法 / マスクレスリソグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,1)赤外吸収メタマテリアルにおいて,その光吸収効率を最大限に高めるための最適な構造を洗い出し,実際にそれを試作することと,2)それを極限的な効率を持つ熱放射デバイス(放熱デバイス)に応用することを目的とした研究を実施している.具体的には,古典電磁気学に基づく固定観念を捨てて,数理学的最適化アルゴリズムを駆使してメタマテリアルに最適な構造を自動かつ網羅的に洗い出し,その光学機能の限界を追求する.そして,設計したメタマテリアル構造を実際に試作し,実験を通してその有効性を検証する. 今年度は, 1)赤外メタマテリアル吸収体の試作・特性評価と2)自動最適化アルゴリズムに基づく,赤外メタマテリアル吸収体構造の最適設計プログラムの開発を中心に研究を行った. メタマテリアル吸収体の試作・特性評価においては,計算機が生み出す構造を網羅的に試作・評価するために,高いスループットを持つ加工プロセスの開発を行った.そこで,ターゲットを光リソグラフィで対応できるマイクロメートルサイズの構造に限定し,マスクレスリソグラフィ法を利用したトップダウン技術を応用して,光吸収メタマテリアルを効率よく試作できる一連の加工プロセスを立ち上げた.そして,この加工装置を利用して,光吸収メタマテリアルを試作し既設設備の赤外分光器を用いてその特性を評価した. 自動最適化アルゴリズムに基づくトポロジー最適化手法を,メタマテリアル吸収体の設計という目的に合わせて最適化させたソフトウェアの開発に着手した.まず有限要素法を用いて光吸収メタマテリアルの構造の光吸収特性を計算し,既知の結果と比較することで計算精度の確認と計算時間の短縮化を追求した.その結果使用する物質の波長分散特性を正確に導入することが計算精度を保つ上で重要であることを確認した.これらの計算で得た知識を元に,トポロジー最適化プログラムを開発中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤外吸収メタマテリアルの加工技術を開発し実際にそれを用いた試料の作製も行っている.またメタマテリアルの構造最適化プログラムについても,研究開始当初は実験結果と計算結果が大きく食い違うという問題に直面したが,その原因が使用している物資の分散特性の精度不足であることを突き止め,それを改善することで計算結果と実験結果とが高い精度で整合するようになった.最適化プログラムの開発は現在進行中であるが,現時点では概ね順調に研究は進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は,6月頃までをめどにトポロジー最適化手法を組み込んだメタマテリアル構造の自動設計プログラムを完成させ,それが生み出す構造を,昨年度に開発した加工技術で網羅的に試作しながらその光学特性を評価し,その結果を再度設計プログラムにフィードバックさせる.この一連のループを繰り返すことで,極限の赤外吸収特性を持つメタマテリアルを実現する.さらに,光吸収特性と光輻射特性は表裏遺体であり,高い光吸収特性を持つ物体は高効率な熱輻射(赤外線輻射)物体でもある.試作した高効率赤外吸収メタマテリアルをホットプレート等で加熱し,そこからの赤外輻射を測定することで,高効率な熱放射デバイス(すなわち放熱デバイス)としての機能を評価する.
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Causes of Carryover |
メタマテリアルの試作においてスパッタリング装置で使用する金ターゲットの購入費を予算に上げていたが,今年度中は装置内に残っていたターゲットで実験が行えたので購入せずに済んだ.次年度は新しいターゲットの購入が必須でありその購入費として予算を執行する計画である.また分担者の方でも最終的にメタマテリアルの最適化設計に必要となる計算機のスペックを見積もり直した所次年度予算では不足することが判明したたため,初年度のソフトウェアの開発は既存の計算機設備を活用することとし,次年度予算を合算して必要な設備を導入することにした.
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