2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K19050
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮坂 等 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50332937)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 多孔性磁石 / ガス吸着現象 / 磁気変換 / 分子ふるい / 磁気誘導 / 磁気変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度からの継続研究で、酸素を吸着して酸素の電子スピンを介した三次元反強磁性磁気秩序を起こす多孔性磁石を開発し、論文として発表した(Nat. Commun.に発表)。ガス吸着で磁気相を変換する世界で初めての例であり、東北大学からプレスリリースするに至っている。この化合物は、細孔内空の状態は、フェリ磁性体であるのに対し、酸素を導入すると、反強磁性体になる。一方、窒素を導入すると、フェリ磁性体のままであり、つまり、ゲスト分子の磁性を明確に区別していることが明らかとなった。この常磁性酸素→反強磁性体(層間反強磁性)、反磁性窒素→フェリ磁性体(層間強磁性)という事実を利用し、多孔性層状磁石の元の磁性相をフェリ磁性体(強磁性体)と反強磁性体に変換できれば、細孔の磁気内部環境を制御することになり、ゲスト分子(反磁性体と常磁性体)の吸着能に影響を与えると予想した。本年度はこれまでの方法論に基づき多くの二次元層状磁石を合成し、その溶媒脱離による安定性(結晶ー結晶転移)とガス吸着能を調べることにより、上記と同様な構造でゲストフリーの状態で反強磁性体(層間反強磁性的相互作用)になる化合物を見出した。この化合物は、低温で磁場によりスピンフリップさせることにより、100 K近くの温度まで強磁性体(磁場誘起強磁性体)になることが確かめられた。これにより、同一構造で層間が反強磁性状態と強磁性状態の2種類の状態(内部磁場が異なる状態)を作り分けることができ、今後、この磁場誘起強磁性体がゲスト分子の磁性を区別する多孔性磁石材料となるかを確かめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々の研究対象となる分子磁性物質は、電子ドナー(D)である水車型ルテニウム二核(II, II)錯体と有機電子アクセプター(A)のTCNQやDCNQIを集積させた金属―有機複合体(metal-organic frameworks; MOFs)であり、これまでも多様且つ多くの物質群と磁性研究の実績があった。そのため、申請時にも磁場誘起強磁性体になりうる多孔性反強磁性体を得ることを確信していたが、思いのほか多様な物質群を見出すに至った。そのため、現在精密その場磁気測定のためのセル開発やシステム開発中であるが、現段階では非常に期待できる成果が得られている。このような研究は世界ではじめての試みであり、今後が楽しみである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見出した「磁場誘起強磁性体になりうる多孔性反強磁性体」について、反強磁性体状態(FCM)と強磁性状態(ZFCM)での酸素と窒素の吸着能について詳細に検討する。また、混合ガスについても検討を始める。その場観察用の特殊セルを開発する。
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Research Products
(25 results)