2018 Fiscal Year Research-status Report
メカノモレキュラーサイエンスの開拓:流動作用のシステム論構築
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18K19051
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
並河 英紀 山形大学, 理学部, 教授 (30372262)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 非平衡 / 自己組織化 / 自己集合 / パターン形成 / アミロイドβ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「流動=機械的仕事」と捉えるメカノケミストリー(超分子・高分子系)およびメカノバイオロジー(細胞・組織)を、「流動=熱力学的仕事(dS/dt>0)」と捉える非平衡自己組織化の学問と融合し、流動による機械的・熱力学的作用が「分子⇒分子集合体⇒生命システム機能」へと時空間的に伝播する現象を包括的にとらえる学問分野「メカノモレキュラーサイエンス」を開拓する本研究では、「流動=機械的仕事」と捉えるメカノケミストリー(超分子・高分子系)およびメカノバイオロジー(細胞・組織)を、「流動=熱力学的仕事(dS/dt>0)」と捉える非平衡自己組織化の学問と融合し、流動による機械的・熱力学的作用が「分子⇒分子集合体⇒生命システム機能」へと時空間的に伝播する現象を包括的にとらえる学問分野「メカノモレキュラーサイエンス」を開拓する。その目的をへ向け、本年度は、Aβの非平衡自己組織化(線維化)への流動作用と神経疾患との関係を解明すべく、流動下でのAβ組織化のin-situ観測装置を構築した。これにより、脂質二重膜を構築したマイクロ流路に蛍光標識Aβを脳脊髄液流動条件で送液し、蛍光顕微鏡でのin-siu観察からAβ吸着量・線維化量と二重膜崩壊量を計測し、Aβ組織化と細胞膜崩壊の相関に対する流速依存性を明確化した。得られた結果より、流動がAβプラークの形成を顕著に促進することが確認された。得られた結果は、流動による(1)連続的なAβモノマーの供給、反応生成物の除去、(2)Aβモノマーの毒性コンホマー時への分子内転換、(3)毒性コンホマー間のオリゴマー化、(4)detergent-modelにより組織化した脂質‐Aβ組織体の細胞膜上での脱離・拡散・凝集によるプラーク化、が関与していることが提案された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画は流動下でのAβ組織化のin-situ観測装置を構築することであった。研究実績の概要でも記載した通り、脳脊髄液流動の測定分解能である10 μm/sにて速度制御が可能なマイクロ流路システムを構築することに成功している。更に、このマイクロ流路システムを用い、リポソームのベシクルフュージョンにより流路内に脂質二重膜を構築することに成功した。その後、脂質二重膜を構築したマイクロ流路に蛍光標識Aβを脳脊髄液流動条件で送液し、蛍光顕微鏡でのin-siu観察からAβ吸着量・線維化量と二重膜崩壊量を計測し、Aβ組織化と細胞膜崩壊の相関に対する流速依存性を明確化した。以上の結果に対し、当初の計画通り、二段階核形成モデルに基づいた分子論的視点からの議論により、流動作用に対する考察を行った。その結果、流動および非平衡開放系による効果として核形成・線維化の促進ならびに細胞膜上でのせん断力による微視的組織化物の離散集合によるプラーク化が重要であることを示唆する結果を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は計画通りの研究を遂行することができたため、今後も計画通りに研究を推進する。2年目は、流動作用に対する提案機構の妥当性を検証するため、レーザー全反射倒立型顕微鏡を用いた単一分子観察実験を行い、脂質二重膜に吸着したAβペプチドの挙動を直接的に観察することを行う。その際にも一定速度の流動を印加させることで、流動作用とAβペプチドの細胞毒性との相関性を分子スケールにて検証することを目的とする。また、リポソームの薬剤透過性についても、脂質膜組成と細胞膜構造の分子スケールでの相関性を明確化することを目指す。
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Causes of Carryover |
初年度にアクティブ除振台(800千円)を計上していたが、マイクロ流路顕微観察システムの設計を行う過程において、アクティブ除振台の導入より、より感度の高いCCDカメラを導入する方が効果的であることが判明した。CCDカメラ以外の実験条件を初年度の実験より確定することができたため、本実験条件に合わせたCCDカメラの選出作業へと移行した。この作業は2年目上半期には完了する予定であるため、2年目内にCCDカメラを購入できるよう、初年度のアクティブ除振台ならびに関連費用を使用せずに繰り越すこととした。
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Research Products
(31 results)