2019 Fiscal Year Research-status Report
メカノモレキュラーサイエンスの開拓:流動作用のシステム論構築
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18K19051
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
並河 英紀 山形大学, 理学部, 教授 (30372262)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 非平衡 / アミロイドβ / リーゼガング / 反応拡散 / アルツハイマー |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病の病理は,アミロイド前駆体タンパク質から切断されたアミロイドβ(Aβ)が脳細胞表面にてアミロイド線維やアミロイド斑として沈着することが引き金となって神経細胞死を誘引するアミロイドカスケード仮説により説明がなされている。このとき,脳間質液(ISF)がAβを脳から排出し蓄積を抑制する作用を有することが知られている一方,Aβに対するISF流動の力学的作用や非平衡熱力学的作用がその細胞毒性を高めることも指摘されており,AβへのISF流動の作用を分子科学的に理解することの重要性が増している。そこで本研究では, ISF循環を系の非平衡性を考慮した分子科学的観点から捉え, 神経変性疾患などに対する流動作用に関してアルツハイマー病を例に研究する。媒体流動の力学的作用と非平衡熱力学的作用の双方をin-vitro実験へ組み込むために使用するのがマイクロ流路である。まず,組成が制御されたリポソーム分散液をマイクロ流路へ流入し,ベシクルフュージョン法によりモデル細胞膜をマイクロ流路内へ構築した。その後,マイクロシリンジポンプに設置されたマイクロシリンジを用いて所定濃度のAβ溶液をマイクロ流路内へ流入させた。流路内がAβ溶液にて満たされたのち,シリンジからのAβ溶液の供給を止め静置した場合を非流動(平衡・閉鎖)条件,引き続きシリンジから所定流速でAβ溶液を連続的に供給した場合を流動(非平衡・開放)非流動・流動条件下での比較より,流動の力学的作用のみならず熱力学的作用をも含めた議論を行った。その結果,ある実験条件においては,非流動条件ではAβ線維が凝集した1 μm程度の凝集体のみが形成されたのに対し, 流動条件下では10 μmを超える巨視的な凝集体が形成したなどの差を確認することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】欄にて述べた通り、流動が分子へ力学的作用すると伴に非平衡組織化を制御し、その複合的結果として生体システムへ疾患をもたらすという本研究の核となる前提を実験的に捉える端緒となるデータを得たため。
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Strategy for Future Research Activity |
Aβの吸着・線維化を二段階核形成モデルに基づいた分子論的視点からの議論するため、モノマーから線維化に至るどの過程に流動が影響を及ぼすかを明確化する。具体的には、全流動から全停止までの各条件での線維化量を測定し、線維化を支配する分子論的段階を明確化することで、流動作用における分子的効果とシステム的効果の相互相関を明確化することを目指す。予備実験より10 μm/s以上では線維化・膜崩壊の促進効果が飽和する結果を既に得ており、初年度達成予定の数μm/s精度の実験システムを用い、生体内に近い低流動条件下での検証を深める。
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Causes of Carryover |
今年度中に実施予定であったマイクロプレートリーダーを用いた実験系構築が、装置調達の関係上、翌年度にずれた。ただし、研究自体は代替法により継続させているので大幅な遅れは生じない。
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Research Products
(14 results)