2020 Fiscal Year Annual Research Report
Frontier of Mechanomolecular Science
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18K19051
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
並河 英紀 山形大学, 理学部, 教授 (30372262)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 非平衡 / アミロイドβ / アルツハイマー / 神経変性疾患 / 細胞膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「流動=機械的仕事」と捉えるメカノケミストリー(超分子・高分子系)およびメカノバイオロジー(細胞・組織)を、「流動=熱力学的仕事(dS/dt>0)」と捉える非平衡自己組織化の学問と融合し、流動による機械的・熱力学的作用が「分子⇒分子集合体⇒生命システム機能」へと時空間的に伝播する現象を包括的にとらえる学問分野「メカノモレキュラーサイエンス」を開拓することを目的とした。本目的へ向け、 脳脊髄液によるペプチド間相互作用の変調の、ペプチド線維化とアルツハイマー病への伝播に関する研究を行った。その結果、脳脊髄液の流動性を模倣したマイクロ流路を用いた実験の結果、流動系、すなわち開放系において、ペプチド間相互作用が非流動系(閉鎖系)とは異なることが確認された。本研究では神経毒性の主原因であるオリゴマー形成に関する議論と、病理学的な診断材料として用いられるアミロイド班形成に関する議論に分けて実験棟を行った。まずオリゴマー形成用に関するミクロスコピックな検証では、閉鎖系と比較して開放系の方が4~5量体の形成が促進されることが明らかとなった。また、細胞膜上に吸着したモノマー密度にも変化が観測された。上記の結果は数値解析シミュレーションからも指示された。更に、この様な分子スケールでの変調がマクロスケールの物性へと伝播することも確認された。すなわち、閉鎖系と比較して開放系ではアミロイド班の形成が経時変化的に進行する挙動が確認された。以上のミクロスケール・マクロスケールでの観察結果は、「流動=熱力学的仕事(dS/dt>0)」としての側面を実験並びに数値計算によりとらえた世界で初めての成果であり、生体内における蛋白質異常凝集の分子機構解明へ向けた新たな視点を提供できるものと考えられる。
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Research Products
(16 results)