2018 Fiscal Year Research-status Report
Unusual diffusion behavior of metal ion in nanoconfined ionic liquid solution
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18K19056
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今西 哲士 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60304036)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | イオン液体 / 拡散 / ナノ構造 / 金属イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリスチレンナノビーズをテンプレートとして半球状の穴(以下、ディンプル)を表面上に周期的に形成させたAu電極基板を作成、種々のイオン液体を電解液として、インピーダンス測定を行った。BMI-TFSAを電解液として用いた場合、ディンプルの直径に関係なくすべての電極において、~0.3 V vs. Pt参照極近辺において、キャパシタンスが山を持つことが確認された。この電位付近では、電極最近接層がカチオンからアニオンに変わる(負から正へ掃引時)ことが過去の他グループの研究により分かっているが、キャパシタンスが極大値を持つのも、この層構造の変化によるものと考えられる。興味深いことに、直径160 nmのディンプルを持った電極において、キャパシタンスの特別に極大値が大きくなる現象が観察された。また、この大きなキャパシタンスを持つディンプルの直径は、イオン液体種によって大きく変化することが分かった。一方、数ナノメートルの直径を持つポーラスシリカ中にAu3+イオンを溶かしたイオン液体を充填させ、ポーラス内の状態を詳しく調べたところ、仕込み濃度の10倍以上の濃度のAu3+イオンがポーラス内に存在することが分かり、濃度濃縮が起きていることが分かった。一方、ポーラス内にCOガスを導入したところ、バルクイオン液体内と比較して、非常に早い速度で内部に拡散していくことが分かった。示差熱測定などの結果より、ポーラス内のイオン液体は固体様になっていることが分かっているが、このことを考慮すると、特殊な拡散様式で拡散しているものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は、ナノ構造空間に閉じ込められたイオン液体の構造について詳しく調べていった。その結果、ディンプル内においては、そのディンプル直径に依存して、イオン液体の局所構造が大きく変わることが分かった。現在のところ、この原因として、次のような仮説を考えている。イオン液体は電極付近においてカチオン、アニオンが交互に並んだ層構造を持つことが知られているが、これらの分子は横方向(電極表面並行方向)に周期構造を持つ。ディンプル内では、その曲率により、この周期構造に歪みが生じるが、基板最近接の層とその上方の層では歪みの程度が異なる。層によって異なる構造周期をもたらし、それらが干渉して新しい周期構造(モアレ様構造)が形成される。この新しい周期構造が、ディンプルの直径と対応した際に、非常に高配向配列した分子層が出来るのではないかと考えている。こうしたことは、今回観察されたキャパシタンスなどの電気物性だけでなく、金属イオン種を溶解させたときの、それらの拡散挙動に大きく効いてくると思われる。ポーラス材料内のイオン液体についても、ポーラス内で特殊な配向構造をとったり、イオン比がバルク内と大きく異なることが分かってきた。いずれも、ナノ空間が、イオン液体の局所構造に大きな影響を与えることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年は、ナノ空間内におけるイオン液体局所構造(配向構造)の発現を観察して、それらの発現メカニズムについて、仮説を提案するところまでいった。また、ポーラス内においては、これらの構造が、バルク内では考えられないような早い分子拡散を誘発することも明らかにした。しかし、現時点においては、これら特殊な配向構造の発現メカニズムや、それらが特殊な拡散挙動を誘発するメカニズムについての解明にはいたっていない。今後は、ディンプル内の配向形成メカニズムについてさらに詳しく調べていくとともに、キャパシタンスのような電気的な性質だけでなく、金属イオンを溶解させた際の拡散挙動について直接観察していきたい。また、ポーラス細孔内においても同様で、COの高速拡散は観察されたものの、そのメカニズムはまだ明確でない。今後は、異なる細孔径やイオン液体を用いて、異なる配向構造を作成し、これらが金属種の拡散挙動にどのような影響を与えるかを詳しく観察することにより、メカニズムの解明に取り組んでいきたい。
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Causes of Carryover |
本年度の研究は、ナノ空間内におけるイオン液体の局所構造を調べることに主眼を置いた。これらは、これまで代表者が行ってきた実験の発展的な続きの実験であり、これまで蓄積、保有してきた資材にて対応が出来たため、残額が生じた。今後は、いよいよ本年度の知見をもとに、これらの局所構造が、溶質拡散にどのような影響を与えるかを調べていく実験に入る。これには、新しい装置や部材、試料を導入し、実験を進めていく必要があり、次年度消費予定の経費と合算した経費を使用していく予定である。
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Research Products
(16 results)