2020 Fiscal Year Research-status Report
Unusual diffusion behavior of metal ion in nanoconfined ionic liquid solution
Project/Area Number |
18K19056
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今西 哲士 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60304036)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
|
Keywords | イオン液体 / ポーラス / ナノ細孔 / 拡散 / 電極 / キャパシタンス |
Outline of Annual Research Achievements |
数nmから数十nmの細孔径を持つポーラスシリカ電極を作成し、その中におけるイオン液体の挙動を調べた。ポーラスシリカは、その内壁を親水性(ROH)および疎水性(R-O-CH3)の官能基をもつ有機分子で修飾し、それぞれの場合のイオン液体分子(BMI-TFSA)の局所構造を、XPSおよび交流インピーダンススペクトルによって調べた。内壁を疎水基修飾したポーラスシリカ電極の場合、内壁に接するようにBMI+カチオンが層を形成し、その内側にTFSA-アニオン層が形成されている様子が分かった。一方で、内壁を親水基修飾した電極の場合、TFSA-アニオン層が内壁に接するように形成され、その内側にBMI+カチオン層が形成されていることが分かった。前者は、BMI+のアルキル鎖が内壁の疎水基と相互作用したため、後者は、TFSA-アニオンと内壁の親水基との相互作用が形成されたためであると思われる。次に、これらの電極に電位を印加して、細孔内のイオン液体分子の電位応答挙動を調べた。疎水基内壁をもつ電極においては、電位応答がほとんど見られなかった。これは、BMI+カチオンが、内壁と強固な相互作用を形成している上に、互いにスタックした構造をとっているために(IRを用いた実験により確認ずみ)、全体的にリジッドな構造になっていたためと思われる。一方、親水基内壁を持つ電極に負電位を印加したところ、内壁側の層がカチオン層へと交代し、それに伴い、その内側の層がアニオン層に、さらにその内側にもカチオン層が形成されることが分かった。詳細な解析の結果、層間間隔も電位印可前と比較して小さくなっていることが分かった。これにより、大幅なキャパシタンスの増大が観察された。この値は、平坦電極界面で見られる同様な層交代によるものと比較しても数倍以上大きなものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究では、主に平坦電極表面上にナノサイズの半球型くぼみ(ディンプル構造)を作り、その界面でのイオン液体と溶質の挙動を見てきたものである。一方で、本年度は、完全に周囲を内壁で囲まれた細孔内における分子挙動を観察した。ディンプル型のナノ構造化電極と比較すると、電極側(細孔内壁)との相互作用の影響が強く、電位印可前の初期構造によっては、電位印可による影響が見えにくいものもあった。一方で、電位印可前の初期構造において、内壁との相互作用が弱いものに関しては、むしろ電位応答による動きが激しいものもあり、ディンプル型電極と細孔型電極で、分子挙動が大きく異なることが明らかになってきた。一方で、細孔側電極内における金属イオン溶質拡散挙動については、実験装置のトラブルもあり、まだ十分に進んでいない。イオン液体分子の挙動が細孔内とディンプル内で大きく異なることからも、ディンプル電極とは異なる拡散挙動が期待される。この2つの比較を行うことによって、当研究課題の主目的である、「イオン液体の局所構造と溶質イオンの拡散挙動の相関」について詳しい知見が得られると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」でも述べたように、本年度から新しく手を付けた「ナノ細孔内におけるイオン液体分子および溶質イオンの挙動解析」は、ディンプル電極を使った実験と相補的な意味をもち、非常に重要な実験である。昨年度までの研究において、ディンプル電極の場合は、ナノディンプル内でイオン液体が圧縮された構造をとり、そこを通過する金属イオンの拡散挙動に大きな影響を与えることが明らかになった。このときの金属イオンの拡散方向は、主にイオン液体溶媒和層に対して垂直(層を横切る)方向なのに対して、ナノ細孔内では、層に対して平行に拡散する。当然、この違いは、金属イオンの拡散挙動に大きな違いを生み出すことが予想され、イオン液体の局所構造だけでなく、その中での拡散異方性についての知見を得られることが期待される。このことから、今後、引き続きディンプル電極における金属イオンの拡散挙動解析を続けるとともに、ナノ細孔内のそれと比較して、多角的な理解を目指す予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度の研究の途中において、世界的なコロナ流行に遭遇し、人的資源の欠乏に加え、実験材料や機器修理の遅れ等により、目標とするデータを得られない状況が続いた。また、作成したナノ細孔内に金属イオンを導入する手法を手探りで行ってきたが、これに予想以上の時間を要してしまい、実験の進行が遅れた。これらのことから、本来の使用予定であった予算に余りが生じ、次年度使用額が生じた。今後は、予定通り、新しい部材や試料を導入し、実験を進めて行く予定であり、当初通り予算を消費する予定である。
|
Research Products
(7 results)
-
-
[Journal Article] Rapid improvements in charge carrier mobility at ionic liquid/ pentacene single crystal interfaces by self-cleaning2020
Author(s)
Yusuke Morino,Yasuyuki Yokota, Hisaya Hara, Ken-ichi Bando, Sakurako Ono, Akihito Imanishi, Yugo Okada, Hiroyuki Matsui, Takafumi Uemura, Jun Takeya, Ken-ichi Fukui
-
Journal Title
Phys. Chem. Chem. Phys.
Volume: 22
Pages: 6131-6135
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-