2019 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanism of how antifreeze glycoproteins adsorb to ice
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18K19060
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
望月 建爾 信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (40734554)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 不凍タンパク質 / 水 / 氷 / 刺激応答性高分子 / 水和水 / 疎水性相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
H31年度は、昆虫が持つ不凍タンパク質RiAFPに関する研究を遂行した。RiAFPは広く疎水的な氷結合面を持ち、最も大きな融点ー結晶点のヒステリシスを引き起こすことが知られている。RiAFPの2量体の結晶構造が得られているが、水中で不凍機能を発揮するときは単量体となる。これまで水中で2量体形成を阻止する仕組みは不明であった。我々は、RiAFPの広く平らな疎水面に挟まれた水の相挙動を調べ、2量体が近づいた時に脱水転移が起こるのではなく、3つのice channelが形成される事を見つけた。自由エネルギー計算から水中での2量体の形成は常温ではほとんど起こらないことを示した。続いて、目的とした高分子による水の相転移制御に関連して、昇温による高分子構造変化における水和水の役割について研究を遂行した。刺激応答性高分子は昇温によりコイル-グロビュール転移を示す。昇温による収縮は、疎水基周りに形成されるクラスレート状の秩序ある水和構造の崩壊が原因であると広く信じられているが、決定的な証拠は示されていない。我々は、全原子分子動力学計算を用いて、水中の PVCL分子のコイル-グロビュール転移を再現した。局所秩序解析により水和水はバルク水よりも無秩序な構造を持ち、PVCLの構造転移前後で顕著な変化を示さない事を明らかにした。また、顕著な脱水も起こっていない事も示した。次に、PVCLの回転半径と側鎖同士の接触数が相関している事を示し、PVCL monomer2分子の間の相互作用の温度依存性を計算し、PVCLの凝集は直接相互作用が主な原因で水介在相互作用はPVCL同士を離す方向に働く事を示した。さらに、昇温により水介在相互作用が減少する事で、PVCL monomer 同士の相互作用が強まり、PVCLのコイルーグロビュール構造変化の原動力となっている事を明らかにした。 これらの研究結果をまとめ、三報の論文を国際誌に発表し、三件の招待講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昆虫の不凍タンパクの水中での振る舞いについて分子機構を明らかにし、研究成果を論文として発表できた。さらに、関連して刺激応答性高分子と水和水の関係についての研究を遂行し、論文として発表できた。
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Strategy for Future Research Activity |
多くの不凍タンパク質は大きな疎水面を持ちながら、水中で凝集する事なく単独で存在し、氷面に選択的に吸着する。氷面近傍だけでなく、水中での振る舞いも含めて、大局的な視点から不凍タンパク質の機能を理解する。さらに、不凍タンパク質の氷への吸着際に水和水の役割に注目する。その点で、刺激応答性高分子と水和水の関係にも注目し、高分子と水が相補的に行う相転移やその制御について研究を広げる。
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Causes of Carryover |
令和2年度に高性能GPU計算機を購入するために研究費の使用計画を変更した事で次年度使用額が生じた。次年度使用額は令和2年度請求額とあわせて高性能GPU計算機の購入に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)