2019 Fiscal Year Research-status Report
二種類の配位構造を利用した光照射下での相転移と光のエネルギー貯蔵の研究
Project/Area Number |
18K19061
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
内藤 俊雄 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20227713)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | 電荷移動遷移 / 電荷移動相互作用 / 電荷移動錯体 / 非平面金錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目標は、ある物質に紫外線等の光を照射し、その際光から受けたエネルギーを物質内に貯蔵し、必要な時に発光させるという技術を確立することである。電池と電気の関係を未知の物質と光に置き換えたイメージで、現存する物質では不可能な全く新しい技術である。2019年度は、本研究の着想の契機となった“ひな形物質”(以下、BPY塩)に類似の新物質の探索を行った。具体的には、BPY塩の構成分子を少しずつ変えた一連の物質を比較して、目的の機能を発揮する物質の条件を探した。その為に行ったサブテーマは、(i) 試料(10種類、すべて新物質)の合成とそれらの単結晶X線構造解析、(ii) 紫外線照射下及び暗黒下での電気・磁気物性測定、(iii) 電子構造の理論計算、(iv) 以上のデータを総合して目的物質の設計指針を立てるという4項目であった。最初合成を試みた10種類の新物質のうち、良質な単結晶が得られたものは6種類であった。それらの単結晶構造解析((項目(i);300 K及び100 K、どちらの温度でも暗黒下と紫外線照射下の両方の条件下での構造を検討)、電気抵抗測定(項目(ii);単結晶、直流二端子法)、分子軌道、特定の原子間や分子間の重なり積分などの計算(項目(iii))を実施した。またこれらの結果から、非磁性の絶縁体であることが分かったため、当初計画していた磁気物性の測定は行わなかった。こうして項目(iv)まで研究が進み、今年度の目的を達成した。すなわち結論としては、次のような知見が得られた。目的の物質を得るためには、金錯体(負イオン)と組み合わせて物質を構成する正イオンに次のような条件が必要である。(A)2価であること、(B)ビピリジル誘導体であること、(C)非対称な分子構造を持つこと。2020年度はこの方針に従って新たな候補となる正イオンを選び、引き続いて研究を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一つの大きな目標であった発光物質を見つけるところが、目視による確認にとどまった一方、光励起状態で電荷移動を起こして金錯体が平面型からゆがむための条件(そうした物質の設計指針)が想定以上に具体的に絞られた。前者の発光に関しては、所属機関の分光装置の故障か新型コロナウィルスによる出張の自粛が解けて外部の研究機関の装置が利用できるようになれば、すぐに発光スペクトルを確認したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果として得られた物質の設計指針をもとに、さらに目標に近づけた新物質を開発していくと同時に、発光スペクトルを測って、物質の設計指針にフィードバックしたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で年度末に予定されていた一連の学会発表が中止になり、その分の旅費が未使用となった。金額としては松山―東京(3泊4日)2回分の出張や論文掲載費(含む色刷代金)またはオープンアクセス代金に相当し、翌年度分の助成金と合わせて十分有効に活用できる見込みである。
|
Research Products
(17 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 錯体化合物事典2019
Author(s)
錯体化学会編集
Total Pages
944
Publisher
朝倉書店
ISBN
978-4-254-14105-4 C3543