2018 Fiscal Year Research-status Report
Creation of Carrier Transporting Molecules utilizing Interactions between sigma-Symmetric Orbitals
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18K19067
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
古川 俊輔 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (70625590)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | σ非局在系分子 / σ芳香族化合物 / 電荷輸送性分子 / 有機半導体 / 有機トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,σ対称性軌道間の相互作用を活用した電荷輸送性有機分子の学理を構築し,3次元的な電荷輸送を実現するための足掛かりとすることである.従来の有機半導体の電荷輸送は,π共役化合物のπ軌道間相互作用によって実現されてきた.しかし,π共役化合物の多くは平面構造であるため,固体中での積層構造がπ-πスタッキングに支配され,電荷輸送に寄与する軌道相互作用が1次元もしくは2次元的にしか広がらない.これらの課題を根本から見直し,3次元的な軌道間相互作用を実現するために,σ非局在系分子を新たに設計し,その合成を検討した. 新たな分子系としてσ-π混合共役系分子を設計し,その合成法の開発を行った.本分子の合成において鍵となるのは,σ非局在系を構築するポリヨードアレーン骨格とπ共役骨格をいかに連結するか,ということである.通常反応活性な炭素-ヨウ素結合を維持したまま,各ユニットを連結する手法としてSNAr反応を採用することで,目的分子を合成できることを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するための計画として,当該年度は「新たなσ非局在系分子の合成手法の確立」を目標とした.本目標は,SNAr型の反応を採用することで,従来まで合成できなかったσ非局在系分子を合成することに成功し,当初の目標を達成した.また,本分子系の代表格であるヘキサヨードベンゼンの電荷輸送メカニズムについても,実験および理論の両面から調査することで,この分子が3次元的な分子間相互作用により,著しく高い電荷輸送能をもつことを明らかにした.この成果は,従来までの「有機半導体と言えばπ共役化合物」という常識を覆す,基礎学術的に極めて重要な結果であり,有機エレクトロニクス分野への応用の観点からも興味深い現象だと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で開発した目的分子群の合成を活用することで,各種誘導体の合成を行い,その基礎物性評価および電荷輸送特性を始めとする3次元的な分子間相互作用について調査する.本分子系は,これまで注目を浴びてこなかった分子系ではあるものの,これまでの検討から電荷輸送性材料としてのポテンシャルは計り知れない.しかし,本分子系の誘導体の合成例は限られており,実施にそれらを合成し評価することは興味深い.今後は,これらの分子群のバリエーションを増やし,さらに誘導化することに注力する.またその物性評価も併せて行う.
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