2019 Fiscal Year Research-status Report
Innovative Synthesis of Amines from Ammonia as Nitrogen Source
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18K19070
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
桑田 繁樹 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (10292781)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | アンモニア / アミン / 均一系触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、金属とそれをとりまく配位子が協働的に作用する「協奏機能触媒」を用いて、基幹化成品であるアンモニアから付加価値の高いアミン類へと直接変換する新規触媒反応プロセスの開発を目的とするものである。 研究開始2年目である令和元年度は、ルイス酸性金属中心ーブレンステッド塩基性配位子の協働によるアンモニアのNH結合切断の実現に向け、より塩基性が高い配位子の開発、ならびに分子内酸化還元によるNH結合切断の促進に取り組んだ。 まず強い電子供与性をもつプロトン応答性配位子として2-ジヒドロピリジリデンをもつルテニウム錯体を合成した。その酸性度は設計意図のとおり、ピラゾールなど従来のプロトン応答性配位子と比べると低く、共役塩基である2-ピリジル錯体がアンモニアの脱プロトン化に有効な塩基性をもつことが示唆された。また、酸化還元活性なプロトン応答型配位子として新たにベンゾキノンジオキシム配位子を設計合成した。予備的な実験によって、この配位子を持つルテニウム錯体が、可逆的に2つのプロトンを放出するだけでなく、ヒドロキノンーキノン型の構造変化を駆動力とする2電子の酸化還元を受けることを明らかにした。 一方で、強い電子供与性のアミダト配位子をもつハーフサンドイッチ型イリジウム錯体が、アンモニアから誘導されるギ酸アンモニウムを窒素源とする、カルボニル化合物の還元的アミノ化反応に対して高い触媒活性を示すことも明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始から2年間の研究の結果、 (1) 協奏機能触媒とアンモニアが反応する (2) その結果として無置換アミド(NH2)種が生じ、これが高い求核性を示す (3) 適切な配位子設計によって、上記(1)(2)のプロセスが促進される ことが実証された。N-H結合切断のさらなる効率化、および触媒反応への展開が解決するべき課題として残っているものの、一連の結果は研究開始当初の作業仮説を支持するものである。協奏機能触媒によるアンモニアを窒素源とするアミン類の直接合成の実現に向けて、本研究は当初の計画通り順調に推移していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、触媒反応に含まれる素過程であるC-N結合形成に必要な要件を探る。具体的には、C-N 結合形成の対象化合物の候補であるアルケン、アルキン、ハロゲン化アリールなどの有機化合物の存在下で、アンモニアとの反応が観測された種々の協奏機能触媒とアンモニア、アミン類との反応を実施する。一連の反応によって、協奏機能触媒のブレンステッド酸点の酸性度や金属中心の電子密度、立体的かさ高さなどの特性と反応性の相関を明らかにする。とくにC-N結合形成が観測された反応系については、金属錯体の量を低減した反応へと条件検討をおこない、反応の触媒化に着手する。標的とする反応の例としては、アンモニアから得られるNH2錯体を鍵化合物とするアルケン、アルキンの触媒的ヒドロアミノ化や、ハロゲン化アリールのアミノ化による第1級アミンの合成が挙げられる。得られた結果を取りまとめ、国際学会も含めた場での成果発表をおこなう。
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