2018 Fiscal Year Research-status Report
Functional Chiral Materials based on Propeller Chirality Dynamics
Project/Area Number |
18K19077
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 直 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70311769)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 学 東京工業大学, 理学院, 准教授 (30505996)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | キラル発光材料 / 機能性材料 / ヘキサアリールベンゼン / トロイダル相互作用 / スイッチング機能 / 円二色性 / 異方性 / プロペラキラリティー |
Outline of Annual Research Achievements |
キラリティーとは3次元の物体や現象がその鏡像と重ね合わすことができない性質をいい、自然界における普遍現象である。キラル発光材料は3Dディスプレイや3D内視鏡などの外科医療技術、光暗号通信等のセキュリティー情報通信材料に必須な基盤技術であるが、有機材料で実用性に耐えうるキラル材料は現在ほとんど知られておらず、現在急速に研究が進められている分野の一つであるといえる。現在のところ、これらの発光特性に関して、その設計指針は確立されていない。 次世代キラル発光材料開発における三要素は、キラリティーの度合いの大きさ(高偏光異方性)、強い発光性能と波長制御(発光特性)に加え、機能性の付与である。ここでいう機能性とは、状況に応じて、キラリティーをON-OFFできること、さらには、その強度を変調できることである。既存の研究は初めの二つの課題を改良するものが主流であり、機能性を有するキラル発光材料の開発研究はこれまでほとんどなされてこなかった。 本研究提案ではこのような背景を踏まえ、ヘキサアリールベンゼンなどの多置換芳香族化合物を基本骨格として用いた「プロペラキラリティーに基づく動的キラル発光材料」の開発に挑戦した。研究の初年度においていくつかのモデル化合物を設計合成し、その物性を検討したところ、機能性を有するキラル発光材料として有用であることが明らかとなり、その初期的な結果をキラリティーと物性相関の体系化した。 研究成果の詳細は本書後半に示すとおりであるが、国際会議における招待講演はもとより、J. Am. Chem. Soc.誌、Angew. Chem. Int. Ed.誌を含む15報の論文等に公表し、その成果の一部は新聞報道もされるに至っている。現在企画編集中のキラル発光材料に関する書籍も順調に準備が進んでおり、本プロジェクトの完了期限までに完成するめどがついた。次年度における研究に向けて大いに期待の持てる状況であると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究「プロペラキラリティーを基盤とする動的キラル材料」の開発においては、協調的に稼働しうるプロペラキラリティーの特徴をさらに詳細に検討し、それを活用することで、動的キラル発光材料へと応用するための基盤技術を獲得することが目的である。 本年度は、ヘキサアリールベンゼンを母骨格としたキラル化合物を設計合成し、そのプロペラキラリティーにおいて、スイッチング機能の評価を行った。モデル系での検討において、幸いにも本プロジェクトの目標のほとんどを前倒しで達成できた。これらの成果は業績欄に記載の通りであるが、ChemPhotoChem誌の総説(Very Important Paperに選出)、J. Am. Chem. Soc.誌 、Angew. Chem. Int. Ed.誌を含む計15報の論文として成果発表したが、当初予想をはるかに上回る成果となった。一部成果については論文誌の表紙に採用、プレスリリースなどの栄誉も勝ち取り、充実した結果となった。このような状況から、本研究は(1)の当初計画以上に進展している、と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度のモデル系での検討は極めて順調に進展し、ヘキサアリールベンゼン誘導体が期待通り機能性を有するキラル発光材料となりうることが明らかとなった。今後もこのペースを維持し、研究推進に努めたい。具体的な検討課題として今後は、(1)より高機能のキラル発光材料への展開、ならびに(2)その動的挙動の詳細の解明、へと、さらに発展的に展開したいと考えている。一例として、ヘキサアリールベンゼン型プロペラキラリティーにおいて、スイッチング機能の向上、センシング性能の評価、応答性能の向上、などに挑戦する。また、ポリマーブレンドやフィルム状態、固相状態、高圧下での物性評価と材料としての応用、などについても順次検討する計画としている。最終的には、ヘリセンのらせんキラリティーなどとも相補的に活用し、個別の成果を動的システムに取り込むことで、強い物性と機能性の両立を達成するような分子系の実証へと進める計画である。
|
Causes of Carryover |
本年度の研究計画が思いのほか順調に達成され、必要な試薬等の材料費が削減されたこと、また別予算の充足により共通して使用する装置等にかかる費用が節約されたため、当初計画を修正し、次年度以降に使用するより発展的な研究への経費へと振りかえた。このことにより、全体的な研究計画がより柔軟となり、さらに挑戦的な機能性発光材料の開発へと展開することが可能となり、本プロジェクトの更なる進展と飛躍が期待される。
|
Research Products
(23 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 光化学フロンティア2018
Author(s)
森 直(編集:水野 一彦、宮坂 博、池田 浩)
Total Pages
17 (400)
Publisher
化学同人
ISBN
9784759814194