2018 Fiscal Year Research-status Report
高反応性化学種の新規発生法を基盤とする有機リン化合物の迅速合成
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18K19078
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平野 康次 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70532696)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | リン / リンラジカル / リンカチオン / ベンゾホスホール / ジベンゾホスホール |
Outline of Annual Research Achievements |
研究一年目に記載した計画に基づき、まずリンラジカルの新規発生法の開発と、それを利用した不飽和結合のジホスフィン化反応を検討した。その結果、可視光駆動触媒としてIr(ppy)3 存在下、ジホスファンに対しNBSを触媒量添加し、青色LEDを照射することで、対応する高反応性リンラジカルが室温、可視光照射という極めて温和な条件下で発生するこを見出した。これを利用することで、スチレンの1,2-ジホスフィン化反応の開発に成功した。これにより、対応するビスジフェニルホスフィノエタン(dppe)が簡便に得られる。さらに、同手法は1,3-ジエンの1,4-ジホスフィン化反応にも有効であることがわかった。この場合はビスジフェニルホスフィノブタン(dppb)誘導体が得られる。dppe, dppbともに遷移金属触媒の配位子として繁用されており、極めて価値の高い分子群を、単純な炭化水素類から簡便に合成する新たな有機合成手法を開発したといえる。 上述したように一年目の研究計画を円滑に実施できたため、二年目に計画していたリンカチオンに関する研究にも一部着手した。その結果、リンカチオンを経由するアルキンとの新規形式的[3+2]環化付加反応が進行し、対応するベンゾホスホールが得られることを見出した。本手法は、従来化学量論量の金属塩を必要とした分子変換を金属フリーで達成できる点、出発物質に置換基が存在しても単一の生成物を完全な位置選択性で与える点が大きな特徴である。さらに、この手法を分子内反応へ展開することで、よりパイ共役系が拡張されたジベンゾホスホールが得られることも明らかとした。この場合も金属フリーで反応が実施できるほか、金属触媒を利用する場合と相補的な位置選択性が発現する等、リンカチオンの特異な反応活性を見出すことにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示した通り、一年目に計画していたリンラジカルの新規発生法の開発とその利用に関する研究が順調に進展し、さらに当初は研究二年目に計画していたリンカチオンに関する研究についてもすでに大きな成果が得られている。以上の事実より、本研究は当初の計画以上に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
リンラジカルに関する研究、リンカチオンに関する研究、ともに順調な進展が見られている。今後はこれらを利用した炭化水素類のホスフィン化反応のさらなる適用範囲の拡大を目指す。合わせて得られた分子の光学特性等についても調査する予定である。
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Causes of Carryover |
当初二年目に予定していた研究計画にも進展が見られたため、そちらも合わせて検討した。その結果、当初一年目に使用予定であった応用展開に関する研究経費が残ることとなった。従ってこれを次年度に持ち越し、当初一年目に計画していた応用展開研究に使用する予定である。
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