2019 Fiscal Year Research-status Report
軸性不斉を有するキラルビアリール化合物の回転障壁を下げることは可能か?
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18K19084
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
秋山 隆彦 学習院大学, 理学部, 教授 (60202553)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 不斉合成 / 軸性不斉 / キラリティー / ビアリール / 回転障壁 / 動的速度論的光学分割 / 速度論的光学分割 / 還元的アミノ化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
光学活性化合物の合成法の開発は,有機合成化学の分野における極めて重要な課題の一つである。ビアリール化合物の炭素―炭素単結合は自由回転が可能であるが,o-位に複数の置換基を導入すると単結合周りの回転が阻害され,軸不斉が生じる。軸不斉を有する化合物は,不斉触媒,不斉配位子のみならず,生理活性化合物にも数多く存在している。近年,軸性不斉を有する化合物を光学純度良く得る手法の開発が,大きな注目を集めている。 研究代表者は,(R)-BINOL由来のキラルリン酸が優れたキラルブレンステッド酸として優れた不斉触媒能を有することを見出し,キラルリン酸を不斉触媒として用いた不斉触媒反応の開発研究を進めている。 本研究においては,軸性不斉を有する化合物,特にビアリール化合物に着目し,動的速度論的光学分割を用いた軸不斉化合物の新たな合成法の開発を行っている。ビナフチル骨格を有するジアミンであるBINAM誘導体のビアリール単結合を回転させ,動的速度論的光学分割により,BINAM誘導体を光学純度良く得ることを目指している。キラルリン酸および還元剤であるHantzschエステルを組み合わせたBINAMとアルデヒドとの還元的アミノ化により,速度論的光学分割が効率よく進行し,対応するBINAM誘導体が良好な収率かつ高い光学純度で得られることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
軸性不斉化合物としてラセミ体のBINAMに着目して動的速度論的光学分割を行っている。速度論的光学分割は比較的効率よく進行することを見出しているが,動的な速度論的光学分割反応の開発については,鋭意努力しているものの,未だ良好な結果を見出すに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
軸性不斉化合物の動的速度論的光学分割の開発を目指して,これまではキラルブレンステッド酸のみを用いてきたが,光反応を用いることにより,ビアリールの回転障壁が低下する可能性があるので,キラルブレンステッド酸に加えて,光酸化還元触媒を併せて用いて,協働触媒として機能することを期待して,動的過程が進行する条件を探索する予定である。
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Causes of Carryover |
軸不斉を有する化合物であるBINAMの反応を試みたが,実験の再現性が低く遂行に想定以上の時間を要した。現在,再現性の問題は解決した。最近,光反応を用いることにより,軸の回転が進行するという興味ある実験結果を見出しており光反応を用いた実験系について,さらに詳細に検討する。このための,試薬,溶媒等の購入および研究成果の発表のための論文投稿料,旅費等に用いる。
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Research Products
(1 results)