2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of a thin film preparation of strongly emissive Cu(I) complex based on solid state synthesis
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18K19086
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 厚志 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (50437753)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 固相合成 / 発光 / 銅錯体 / 配位高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は、発光性Cu(I)錯体の固相合成法における融解配位子の役割を明らかにするべく、二核錯体系[Cu2I2(PR3)2(pyrpy)]のホスフィン配位子類縁体を用いた融点制御と、配位高分子[Cu2I2(m,m’-bpy)]n系におけるビピリジン配位子による融点制御を行った。 二核錯体系においては用いるホスフィン配位子によって、最も低い融点を有する補助配位子pyrpyの融解によって目的錯体が形成する場合と、より高い温度が必要になる場合に分かれることが明らかとなり、融解したpyrpy液体に対するホスフィン配位子の溶解性が強く影響している可能性が示唆された(Inorg. Chem. 2018, 57 5929に発表済み)。 配位高分子系では、110℃付近に融点を有する4,4’-ビピリジンと、室温で液体である3,3’-ビピリジンを用いて検討したところ、3,3’-bpyでは加熱する必要なく目的とする配位高分子が原料の磨砕混合により速やかに生じる一方、4,4’-bpyを用いた場合には110℃以上に加熱しないと得られないことが明らかとなった。また用いる配位子の量は、原料であるCuIに対して少過剰量必要であるものの、140℃で余剰な配位子を揮発させて取り除くことで、完全無溶媒条件下で定量的に目的の配位高分子が得られることも明らかとした(Inorg. Chem. 2019, 58, 4456に発表済み)。 以上の結果から、融解した配位子が錯体形成反応を著しく加速していることが明らかとなり、通常の溶液反応で用いる溶媒の役割を果たしていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の検討により、融解した配位子が反応を大幅に促進し得ること、また二種類以上の配位子を用いた系においては、それらの溶解性が生成物に至る反応性を大きく変化させうることを明らかとし、発光性Cu(I)錯体の固相合成法の基本原理を確立するに至っている。また、固相合成の長所である環境調和という観点においても、完全無溶媒条件という厳しい合成条件下で定量合成に成功しており、当初の予定以上の成果を得てきていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発してきた固相合成法はいずれも配位子の融解が反応のトリガーとなっていたが、これでは発光色制御する上で、異なる反応条件に最適化する必要が生じてしまう。そこで研究次年度では、この問題点を打破するべく、薄膜プロセスにおけるその場合成を志向して、正孔輸送剤を模したトリフェニルアミン類縁体をフラックスとした発光性Cu(I)錯体の加熱合成を検討する。フラックスの融解によって、錯体形成反応を促進することができれば、青から赤まで異なる発光色を有する錯体種を薄膜化する際にも、同一の合成条件で生成させることが可能となり、プロセスコストの大幅な軽減が図れると期待できる。同時に、従来の溶液反応では合成が困難とされた難溶性の配位子を含む発光性Cu(I)錯体および配位高分子系の検討も積極的に行い、固相合成法でのみ生成する種を積極的に探索する。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも必要経費が抑制できた結果18万円程度の繰越金が生じたが、これは翌年度の必要経費(合成用試薬や成果発表に関わる旅費等)に充当することで運用する予定である。
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