2018 Fiscal Year Research-status Report
高性能MRI造影剤設計の学理開拓 ―配位不飽和配位高分子を基体とする新アプローチ
Project/Area Number |
18K19087
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
壹岐 伸彦 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (50282108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 敦子 (升谷敦子) 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (10633464)
唐島田 龍之介 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (40783303)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 造影剤 / MRI / 配位高分子 / 多孔性 / 配位不飽和 / 生体安全性 / 緩和能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は配位不飽和サイト(CUS)を有する多孔性配位高分子(PCP)を基体として高性能の磁気共鳴画像化法(MRI)の造影剤(CA)を創製することを目的とする.本年度は生体毒性の低い中心金属Mn(II)と2,5-dihydroxy-1,4-benzenedicarboxylato配位子としてPCPを合成し,その構造解析,サイズ制御,水分散性について検討した.水熱法により合成したところ,マイクロメーターサイズのPCPを生成した.既報との比較によりCUSを有するPCPであることが判明した.CUSは水溶液中では水分子を配位し高緩和能が期待できる.ついで酢酸MnのDMF溶液に配位子のDMF溶液を20時間かけて滴下し,得られた固体をメタノールに浸漬してPCPを合成した.浸漬時間を1日から6日までのばし,構造解析したところ,PCPの生成および粒子サイズの縮小が見られ,なんらかの熟成が起きていることがわかった.最終的に目標とするナノサイズ(10~150 nm)のPCPを得る事が出来,がんへのEPR効果による送達が期待できる.ついで水やリン酸緩衝生理食塩水への分散性を検討した.分散後2~3分経過して沈殿物を確認した.240分後にはほぼ全て沈殿した.分散性の低さが課題となる.5分後の懸濁液のDLSを調べたところ粒径は2000から6000 nmであり,凝集していることがわかった.水分散性の向上を目指すべく,メトキシポリエチレングリコール(PEG)アミンでPCP上の末端カルボキシル基の修飾を試みた.上記の合成条件下でこれを添加したものの粒子のSEM像は変わりなく,PEG化されていないと判断できる.サイズ制御と併せて分散性の向上が課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CUSを有するナノサイズのPCPを合成することには成功したものの,水分散性が低いことが判明した.これは表面のカルボキシル基による水和だけでは水分散性の確保が困難であるという予想外の原因によるものである.このため安定性の評価や,磁気緩和能の測定,in vivoイメージングへの展開など,次のステップに進むことができず,水分散性の確保とサイズ制御を両立させる表面修飾法の探索を余儀なくされている.今後上記のようにPEG化を中心に検討を進める.PCPの水分散性が確保できればそれは一つの学術的に有意義な副産的成果となる.
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Strategy for Future Research Activity |
上記のようにPCPの水分散性の確保が課題である.すでに述べたようにPCPのカルボキシル基をアンカーにPEG化することを現在検討中である.その他シクロデキストリンの化学結合やスルホ基を有する配位子でPCPのMn表面を被覆するなど,共有結合や非共有結合的な戦略を試行する.2019年度の前半にめどをつけ,後半で安定性・緩和能評価を行う.水中で不安定なものや緩和能が著しく低いものはPCP設計からやり直す.良好なものは次のin vivo検討,さらに配位子骨格を拡張したPCPへ展開し,生体安全性の高く,高緩和能を有し,さらに診断薬や抗がん剤を包接できるPCPの設計指針を獲得する.
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Causes of Carryover |
配位不飽和サイトを有する多孔性配位高分子を得ることに成功したが,水分散性が低いことが判明し,その次のステップに進めなかったのが原因である.次年度には水分散性の確保を共有結合や非共有結合戦略の双方から検討し,研究を加速させる.その際に今回生じた次年度使用額を活用する.
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