2018 Fiscal Year Research-status Report
Oxidative cracking of harmful aromatic compounds and the recycling
Project/Area Number |
18K19089
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小島 隆彦 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20264012)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | ルテニウム錯体 / パラジウム錯体 / 水溶液 / 芳香族化合物の酸化分解 / 水素発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
N-ヘテロ環状カルベンを含む3座配位子BPIm (1,3-bis(2-pyridylmethyl)imidazole-2-ylidene)とbpy (2,2”-bipyridine)を有するルテニウム(II)-アクア錯体を触媒、(NH4)2[Ce(NO3)6] (CAN)を酸化剤として、酸性水溶液中で、分散しているベンゼンおよびその誘導体、さらには多環芳香族化合物の芳香環を酸化的に分解し、ギ酸及びカルボン酸を得る方法を見いだし、その反応系における適用範囲の策定と反応機構の解明を行った。ベンゼンは効率よくギ酸に酸化され、その同じ溶液のpHを3.3に調整し、既報のRh(III)錯体を触媒として添加すると、水素が得られた。基質のベンゼン誘導体として、ベンジル位に比較的弱いC-H結合を有するエチルベンゼンを用いた場合、驚くべきことに、ベンジル位の酸化は進行せず、ギ酸とプロピオン酸が触媒的に生成した。その他、ナフタレン、アントラセンも酸化的に分解され、水素源となるギ酸を与えた。これらの結果は、環境汚染物質である水中に分散した芳香族化合物からエネルギー源としての水素を触媒的に取り出せることを意味している。反応機構として、酸化活性種であるRu(III)-オキシル錯体が芳香環を求電子的に攻撃し、ベンゼンオキシドを経由して、さらに酸化反応が進行してムコンアルデヒド及びムコン酸が生成する。これらの生成物がさらに酸化されて、ギ酸を生成することがわかった。一方、ベンセン酸化分解の副反応経路として、1,4-ベンゾキノンを経由するパスが存在することも明らかとなった。本成果は、ACS Catal. 2019, 9, 671-679として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.Ru(II)-NHC錯体を触媒とするベンゼンの酸化分解反応系においては、電子吸引基が結合しているベンゼン誘導体の酸化分解は効率よく進行しない。昨年度、新規Pd(II)-NHC錯体を合成し、そのキャラクタリゼーションを行った。そのPd(II)錯体を触媒、オキソン(KHSO4・K2SO4・KHSO5)を酸化剤として用いることにより、pH2の水溶液中で、効率よくジクロロベンゼンなどの電子不足芳香族化合物の酸化的分解が進行することを明らかにした。反応効率として、ベンセン<クロロベンゼン<m-ジクロロベンゼン<p-ジクロロベンゼン<o-ジクロロベンゼンの順にギ酸生成反応の触媒回転数(TON)が上昇した。さらに、o-ジクロロベンゼンの酸化過程において、モノクロロキノンが中間体として生成することが、反応液のEI-MSスペクトル測定により明らかとなった。また、Pd(II)-NHC錯体とオキソンとの反応において、LPd(II)-OOSO3錯体の生成が、ESI-TOF-MSスペクトル測定により示唆された。 2.最近、Pd(II)-NHC錯体とオキソンの組み合わせに、Ce(IV)塩を助触媒として加えることにより、これまで酸化困難であったフッ化ベンゼン誘導体が酸化的に分解され、ギ酸を生成することが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
Pd(II)-NHC錯体を触媒、オキソンを酸化剤とする酸性水溶液中における電子吸引基を有する芳香族化合物の酸化的分解について、速度論的考察を加えて反応機構の解明を目指す。触媒反応の初期速度に関して、基質、触媒、及び酸化剤の各濃度に対する依存性を検討する。また、反応中間体および酸化活性種のキャラクタリゼーションを行い、反応機構に関する詳細を明らかにする。さらに、最近見いだされたCe(IV)塩を助触媒とするフッ化ベンゼン類の酸化的分解反応について、その適応範囲の策定と反応機構に関する速度論的検証を行う。特に、Ce(IV)イオンがどのように反応に関与し、酸化困難なフッ化ベンゼン誘導体を酸化しているのかについて、できる限りの知見を得る。
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Causes of Carryover |
昨年度は、一昨年度に合成した配位子やルテニウム錯体のストックがあり、想定していた合成用試薬類の購入量が低かったことが要因で、出費が抑えることが出来た。このため、今年度は、150万円程度の備品の購入が可能となったため、キセノンランプを購入し、光駆動型の酸化触媒系の構築に展開していきたいと考えている。
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Remarks |
(2)は2018年8月4日~5日に、ICCC2018 Post Conference in Tsukuba: International Symposium on Recent Advances in Bioinspired Molecular Catalysis(国際会議)を開催した際のURL。
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Research Products
(50 results)
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[Journal Article] Intermediate-Spin Iron(III) Complexes Having a Redox-Noninnocent Macrocyclic Tetraamido Ligand2018
Author(s)
Takahiko Kojima, Fumiya Ogishima, Takahisa Nishibu, Hiroaki Kotani, Tomoya Ishizuka, Toshihiro Okajima, Shunsuke Nozawa, Yoshihito Shiota, Kazunari Yoshizawa, Hiroyoshi Ohtsu, Masaki Kawano, Takuya Shiga, and Hiroki Oshio
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Journal Title
Inorganic Chemistry
Volume: 57
Pages: 9683-9695
DOI
Peer Reviewed
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